CISOとは?役割と中小企業での対応を解説

CISOとは?役割と中小企業での対応を解説
2024.7.5

サイバーセキュリティの重要性が日々高まるなか、大企業では当たり前となりつつある「CISO(最高情報セキュリティ責任者)」という役職。しかし、その具体的な役割やCIOとの違いは、まだ十分に理解されていないのが現状ではないでしょうか。
また、サイバー攻撃は大企業だけでなく、中小企業も標的にされます。では、CISOを置く余裕がない中小企業は、どのようにしてこの脅威に立ち向かえばよいのでしょうか?

本記事では、CISOの役割を解説するとともに、企業規模にかかわらず実践できるCISO設置の代替方法を説明します。

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目次

CISOとは

CISOの役割

CISOとは、Chief Information Security Officer(最高情報セキュリティ責任者)の略で、組織全体の情報セキュリティを統括する経営幹部です。 CISOの主な役割には以下が含まれます:

1. セキュリティ戦略の策定と実行
2. リスク評価とマネジメント
3. セキュリティポリシーの策定と運用
4. インシデント対応計画の立案と指揮
5. コンプライアンスの確保
6. セキュリティ予算の管理
7. 経営陣へのセキュリティ報告
8. 従業員のセキュリティ教育
9. 新技術の評価と導入

CISOは技術的知識だけでなく、ビジネス戦略の理解や組織管理能力も求められます。サイバーセキュリティを経営課題として捉え、組織全体のセキュリティレベル向上に貢献する重要な役割を担います。

CIOとの違い

CISOとよく似た言葉でCIOという言葉があります。両者は情報技術に関する重要な役職ですが、その責務と焦点は大きく異なります。

CIO(Chief Information Officer)は、組織全体の情報技術戦略を統括する役職です。主にビジネス目標達成のためのIT活用、DXの推進、IT投資の決定などを担当します。CIOの視点は広範囲に及び、企業の競争力向上やビジネスプロセスの効率化にITをどう活用するかを考えます。

一方、CISO(Chief Information Security Officer)は、組織の情報セキュリティに特化した役職です。サイバーセキュリティ戦略の立案、セキュリティポリシーの策定、リスク管理、セキュリティインシデントへの対応などが主な責務となります。CISOの焦点は、組織の情報資産を保護し、サイバー脅威から企業を守ることにあります。

CIOがIT全般を統括するのに対し、CISOはその中でもセキュリティに特化しているという違いがあります。多くの組織では、CISOがCIOの下に位置づけられていますが、セキュリティの重要性が増す中、CISOを独立した役職として設置する企業も増えています。

両者は密接に連携しながら、組織のデジタル戦略とセキュリティ戦略のバランスを取る重要な役割を担っています。

項目
CISO
(最高情報セキュリティ責任者)
CIO
(最高情報責任者)
主な責務情報セキュリティの管理と保護全社的なIT戦略の立案と実行
焦点サイバーセキュリティ、リスク管理IT基盤の整備、デジタル化推進
業務内容• セキュリティポリシーの策定
• セキュリティ監査の実施
• インシデント対応の指揮
• IT投資の決定
• システム導入の統括
• DXの推進
報告先CEO または CIOCEO
予算管理セキュリティ関連予算全社IT予算
技術知識セキュリティ技術に特化
(幅広いIT知識があればなお良い)
幅広いIT知識
外部連携セキュリティベンダー、監査機関ITベンダー、コンサルタント

CISOがいない場合どうなるか

CISOを置かないリスク

CISOを置かないリスクについて、以下にまとめます

セキュリティ戦略の欠如

組織全体のセキュリティ戦略を立案・実行する専門家がいないため、場当たり的な対応になりがちです。これにより、重要な脅威を見逃したり、効果的でない対策に資源を浪費する可能性が高まります。

インシデント対応の遅れ

サイバー攻撃が発生した際、迅速かつ適切な対応ができず、被害が拡大するリスクがあります。専門知識を持つCISOがいないと、初動の遅れや誤った対応により、データ損失や業務停止の期間が長期化する恐れがあります。

コンプライアンス違反のリスク

情報セキュリティに関する法規制や業界標準への対応が不十分になる可能性があります。これは罰金や制裁金、取引先からの信頼喪失につながる可能性があります。

セキュリティ投資の非効率化

CISOがいないと、セキュリティ投資の優先順位付けや費用対効果の分析が適切に行われない可能性があります。結果として、重要度の低い対策に過剰投資したり、重要な対策を見逃したりするリスクが高まります。

経営層とのコミュニケーション不足

CISOは経営層にセキュリティリスクを適切に伝え、必要な対策への理解と支援を得る役割を果たします。この役割が欠けると、セキュリティ対策が経営課題として認識されず、必要な予算や人員が確保できないリスクがあります。

新たな脅威への対応遅れ

サイバー脅威は日々進化しています。CISOがいないと、新たな脅威に対する情報収集や対策の検討が遅れ、最新の攻撃手法に対して脆弱な状態が続く可能性があります。

セキュリティ文化の欠如

CISOは組織全体のセキュリティ意識向上を主導します。この役割がないと、従業員のセキュリティ教育が不十分になり、人的ミスによるセキュリティインシデントのリスクが高まります。

ビジネス機会の損失

近年、取引先や顧客からセキュリティ対策の証明を求められるケースが増えています。CISOがいないと、こうした要求に適切に応えられず、ビジネス機会を逃す可能性があります。


これらのリスクは、組織の規模や業種によって影響の度合いが異なりますが、情報セキュリティが経営課題として重要性を増す中、CISOの不在は組織にとって大きなリスクとなり得ます。

CISOに関する中小企業の現状

中小企業におけるCISOの現状は、残念ながら多くの課題を抱えています。

まず最も大きな問題は、CISOの重要性に対する認識の不足です。多くの中小企業経営者は、自社がサイバー攻撃の標的になるとは考えておらず、セキュリティ対策を優先課題と捉えていません。 この認識の欠如は、深刻な人材と予算の制約につながっています。専門性の高いCISOを雇用し、適切な報酬を支払うだけの予算を確保できている中小企業は稀です。結果として、セキュリティ対策が不十分なまま放置されるケースが多く、企業のリスクを高めています。

さらに、CISOを置く代わりに既存の従業員がセキュリティ責任者を兼務するケースが多く見られますが、これは新たな問題を生み出しています。兼務者は本来の業務に加えてセキュリティ管理も行わなければならず、どちらも中途半端になりがちです。特に、専門知識が不足している場合、効果的なセキュリティ対策を講じることは極めて困難です。
また、外部のセキュリティサービスに依存する傾向も見られますが、これにはコスト面での課題があります。継続的なサービス利用料が経営を圧迫する可能性があり、結果的に必要最小限の対策しか講じられないことも少なくありません。

教育面でも課題があります。従業員のセキュリティ意識が低く、基本的な対策すら徹底されていない企業が多いのが現状です。セキュリティ教育にリソースを割く余裕がないため、人的要因によるセキュリティリスクが高まっています。
規制対応も中小企業にとっては大きな負担となっています。業界によってはセキュリティ規制への対応が求められますが、専門知識を持つCISOがいないため、適切な対応ができず、コンプライアンス違反のリスクを抱えている企業も少なくありません。

これらの問題が複合的に作用した結果、多くの中小企業がサイバーセキュリティに対して脆弱な状態に置かれています。攻撃者にとっては格好の標的となり、実際に被害に遭うケースも増加しています。にもかかわらず、対策の重要性が十分に認識されていないため、この状況の改善は進んでいないのが現状です。

CISOなしでも実践できるセキュリティ対策

CISOに変わる対策

大企業でも設置の難しいCISO。中小企業ではどのような対策ができるのでしょうか。
CISOを置かなくても実践できる代替策について、以下にまとめます

セキュリティタスクフォースの設立

CISOは必ずしも権限を持った「人物」でなければいけないということはなく、まずはチームとして設置することでハードルを低くすることができます。経営陣、IT部門、法務部門など、多様な部署からメンバーを集めてセキュリティタスクフォースを組織します。このチームが協力して、CISOの役割を分担して担います。定期的に会合を持ち、セキュリティ戦略の策定や実施状況の確認を行います。

既存の役職者への権限付与

CIOやIT部門長など、既存の役職者にセキュリティ責任者としての権限を与えます。ただし、この場合は当該役職者に十分な時間とリソースを割り当て、セキュリティ管理に注力できるようにすることが重要です。

外部サービスの利用

外部の専門家やコンサルティング会社が提供する外部CISOサービスを活用します。これにより、フルタイムのCISOを雇用するコストを抑えつつ、高度な専門知識を得ることができます。

マネージドセキュリティサービスの活用

セキュリティ監視、インシデント対応、脆弱性管理などのサービスを提供するマネージドセキュリティサービスプロバイダー(MSSP)と契約します。これにより、専門家による24時間体制のセキュリティ管理が可能になります。

外部監査の定期実施

定期的に外部のセキュリティ監査を受けることで、客観的な視点からセキュリティ状況を評価し、改善点を特定します。


これらの方策を組み合わせることで、CISOがいなくても効果的なセキュリティ管理体制を構築することが可能です。ただし、企業の規模や業種、取り扱う情報の重要性などに応じて、最適なアプローチは異なります。また、これらの代替策を実施しながらも、将来的にはCISOの採用や育成を検討することが望ましいでしょう。

段階的なCISO設置の手順

CISOを設置する前の中小企業が、CISO設置に向けて段階的に実施すべき事項について説明します。これらのステップを踏むことで、組織のセキュリティ成熟度を高め、最終的にCISOの設置をスムーズに行うことができます。

暫定的なセキュリティ責任者の指名

既存の管理職にセキュリティ責任を付与し、必要な権限を与えます。

セキュリティ意識の向上

経営陣と全従業員向けのセキュリティ教育を実施し、リスクへの理解を深めます。

基本的なセキュリティポリシーの策定

情報セキュリティ基本方針や主要なルールを作成します。

リスク評価の実施

重要資産の特定、脅威分析、現状の対策評価を行います。

初期セキュリティ投資

基本的なセキュリティツールの導入と、必要に応じて外部専門家の活用を始めます。

セキュリティタスクフォースの設立

各部門の代表者でチームを組織し、戦略策定と実行計画を立案します。

コンプライアンス対応

業界特有の規制を理解し、必要な対策を実施します。

インシデント対応能力の強化

対応計画の策定、チーム編成、定期的な訓練を行います。

セキュリティ監査の実施

内部監査体制の構築と、定期的な外部監査を実施します。

セキュリティ専門人材の育成・採用計画

既存社員のスキル向上や、専門職採用の計画を立てます。

セキュリティ予算の確保と管理

年間予算の策定、投資効果の測定プロセスを確立します。

CISO職の設計

役割と責任を明確化し、必要なスキルを定義、組織での位置づけを検討します。

これらのステップを組織の状況に応じて適切に実施することで、CISO設置に向けた体制を段階的に整えることができます。各ステップの進捗を定期的に評価し、必要に応じて調整を行うことが重要です。

まとめ

中小企業にとってもサイバーセキュリティは避けて通れない課題となり、CISOの重要性は高まる一方ですが、多くの中小企業にとって専任のCISOを置くことは現実的ではありません。
しかし、これは決して諦める理由にはなりません。セキュリティタスクフォースの設立、既存の役職者への権限付与、外部CISOサービスの活用など、代替策は多く存在します。重要なのは、自社の状況に合わせて段階的にセキュリティ体制を強化していくことです。
経営者の意識改革、従業員教育、基本的な対策の実施から始め、徐々にレベルアップを図っていくことで、CISOに匹敵する機能を持つ組織体制を構築できます。セキュリティ対策に終わりはありません。今日から一歩ずつ、着実に前進していきましょう。

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