迷惑メール対策として有効なDMARCとは?

迷惑メール対策として有効なDMARCとは?
2024.7.2

電子メールは私たちの日常生活やビジネスにおいて欠かせないコミュニケーションツールとなっており、多くの人が毎日何通ものメールをやり取りしています。しかしながら、その裏には常にセキュリティの脅威が潜んでいます。 特に深刻な問題となっているのが、なりすましメールによる詐欺や情報漏洩です。有名企業や金融機関を装ったメールで個人情報を盗み取ったり、取引先になりすまして振込先を変更させたりする手口は、年々巧妙化しています。

そうした中で注目を集めているのが「DMARC」です。DMARCは、なりすましメールに有効な対策として企業への導入が推進されています。 本コラムでは、DMARCの基本的な役割や導入のメリットについてわかりやすく解説します。

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目次

DMARCとは

DMARCは「Domain-based Message Authentication, Reporting and Conformance」の略称で、「ディーマーク」と読みます。送信ドメインの認証を強化し、不正利用を防ぐための仕組みです。この技術により、メール受信者は送信元の信頼性を確認でき、送信者は自社ドメインの不正利用を防ぐことができます。

DMARCの主な目的は以下の3つです。

  • メール受信者がなりすましメールを識別し、ブロックできるようにすること
  • 正規の送信者が自社ドメインの不正利用を検知し、対策を講じられるようにすること
  • メール送受信の認証結果を可視化し、メールシステムの信頼性を向上させること

DMARCは、既存の認証技術を基盤としながら、それらをさらに強化する役割を果たしています。

DMARCの仕組み

DMARCは、単独で機能するわけではありません。既存のメール認証技術であるSPF(Sender Policy Framework)とDKIM(DomainKeys Identified Mail)を組み合わせて動作します。

SPFとは

SPFは、メールの送信元IPアドレスが正規のものかを確認する技術です。ドメイン管理者が、メール送信を許可するサーバーのIPアドレスをDNSサーバーに登録しておくことで、受信側はそれを参照して送信元の正当性を判断できます。

DKIMとは

DKIMは、メールの内容が送信途中で改ざんされていないことを保証する技術です。送信者が電子署名を付与し、受信者がその署名を検証することで、メールの真正性を確認します。

DMARCの仕組み

DMARCは、これらSPFまたはDKIMで認証されたドメイン名が送信者のドメイン(header-from)と一致していれば認証成功とします。 認証に失敗した場合は、送信ドメインの管理者が設定したポリシーに基づいて、メールの取り扱いを決定します。
また、送信ドメインの管理者はDMARCの認証状況をDMARCレポートとして受け取ることもできます。

DMARCの仕組み

(出典:迷惑メール対策推進協議会  送信ドメイン認証技術導入マニュアル第3.1版

DMARCの導入効果

DMARCを導入することにより、以下のような効果があります。

なりすましメール対策

DMARCの最大の利点は、自社ドメインを使用したなりすましメールを効果的に防止できることです。これにより、フィッシング詐欺やビジネスメール詐欺(BEC)などの脅威から組織と顧客を守ることができます。

ブランド保護

なりすましメールによる被害を防ぐことで、企業のブランドイメージを守ることができ、レピュテーションの低下を防ぐことができます。

また、DMARCを設定すると、BIMI(Brand Indicators for Message Identification)を利用することができます。BIMIは、認証されたメールの送信者のロゴを受信トレイに表示する仕組みであり、利用することでセキュリティとブランディングを同時に強化できます。

メール配信率の向上

正規のメールであることが明確に示されるため、スパムフィルターに誤って振り分けられるリスクが低減します。これにより、重要なメッセージが確実に届くようになり、ビジネスコミュニケーションの効率が向上します。

可視性の向上

DMARCレポートにより、自社ドメインを使用したメールの送信状況を把握できます。これにより、不正使用の試みを早期に発見し、対策を講じることができます。

DMARCの導入ステップ

DMARCの導入は、段階的なアプローチが推奨されます。以下に、基本的な導入ステップを示します。

Step 1: 現状分析

まず、現在のメール環境を分析します。SPFとDKIMの設定状況を確認し、必要に応じて修正や追加を行います。

Step 2: DMARCレコードの作成

初期段階では、ポリシーを「none」に設定したDMARCレコードを作成します。これにより、実際のメール処理に影響を与えることなく、レポートの収集を開始できます。

v=DMARC1; p=none; rua=mailto:dmarc-reports@example.com

Step 3: レポート分析

収集されたDMARCレポートを分析し、正規のメールが正しく認証されているか、不正使用の試みはないかを確認します。

Step 4: ポリシーの段階的な強化

レポート分析の結果を基に、ポリシーを徐々に強化していきます。「none」から「quarantine」(隔離)、最終的には「reject」(拒否)へと移行します。

Step 5: 継続的な監視と調整

DMARCの導入後も、定期的にレポートを分析し、必要に応じて設定を調整します。メール環境は常に変化するため、継続的な監視が重要です。

DMARCの課題と注意点

DMARCは強力なセキュリティ対策ですが、導入や運用に当たっては以下のような課題や注意点があります。

実装の複雑さ

DMARCの設定、特にSPFとDKIMの正確な設定には専門知識が必要です。社内に設定できる人材がいない場合は、外部の専門家などに設定を代行してもらう必要があります。

正規メールの誤判定リスク

厳格すぎるポリシー設定により、正規のメールが誤って拒否される可能性があります。特に、サードパーティサービスを利用してメール送信を行っている場合は注意が必要です。

レポート管理の負担

DMARCレポートは日々大量に生成されます。これらを適切に管理し、分析する体制を整える必要があります。
負担が大きい場合には、専用のDMARC分析ツールを利用することで、大量のレポートを効率的に分析することができるため、検討しても良いでしょう。

段階的な導入が必要

DMARCは一度に完全導入するのは難しいため、段階的なアプローチを取りながら、移行を進める必要があります。

送信側と受信側の両方の対応が必要

送信側だけでなく受信側もDMARCに対応している必要があります。なお、主要なメールプロバイダーは既にDMARCをサポートしていることが多いです。

DMARCのガイドライン

DMARC関連のガイドラインとしては、以下がありますので、参考にしましょう。

送信ドメイン認証技術導入マニュアル

迷惑メール対策推進協議会が公表する「送信ドメイン認証技術導入マニュアル」があります。SPF、DKIM、DMARCの基本的な説明から設定方法まで丁寧に解説されています。

(出典:迷惑メール対策推進協議会  送信ドメイン認証技術導入マニュアル第3.1版

フィッシング対策ガイドライン

フィッシング対策協議会が公表する「フィッシング対策ガイドライン」は、送信ドメイン認証だけでなく、フィッシング全般の脅威や対策についてまとめられています。また、フィッシング対策のための重要項目なども記載されているため、対策を始める前に確認しておくと安心です。

(出典:フィッシング対策協議会  フィッシング対策ガイドライン

まとめ

なりすましメールの脅威が増大する中、DMARCの導入は企業にとって重要な対策となりつつあります。適切に導入・運用すれば、安全で信頼性の高いメールコミュニケーションを実現することができます。 メールを介したフィッシング詐欺やビジネスメール詐欺による被害は年々増加しており、そうした被害への対策にもDMARCは有効です。
DMARCの導入には課題もありますが、それ以上にメリットもあります。メールは今後も重要なコミュニケーションツールであるため、計画的に導入を進めていきましょう。

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