IT資産管理の基礎知識とその重要性

IT資産管理の基礎知識とその重要性
2025.02.05

現代のビジネスにおいて、PCやサーバーなどのIT資産は組織運営にとって欠かせない要素となっています。ITは組織の業務効率を向上させ最適化しますが、IT資産の増加や複雑化に伴い、これらを適切に管理することが難しくなってきています。
そのため、組織はIT資産管理(IT Asset Management:ITAM)に注目し、効率的な管理体制を構築する必要があります。
本稿では、IT資産管理の基本的な知識とその重要性について詳述し、組織が適切な管理を行うためのポイントを解説します。

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目次

IT資産管理とは何か

IT資産管理とは、組織が所有するハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク機器、データベースなどのITリソースを一元的に把握し、そのライフサイクル全体を管理するプロセスのことです。
具体的には、調達、導入、保守、更新、廃棄に至るまでの全ての段階を管理することが含まれます。
そして、IT資産管理を行うことにより次のような効果が得られます。

リスク管理

ハードウェアの老朽化やソフトウェアの脆弱性を把握しやすくなり、サイバー攻撃などのリスクを把握することができます。

コンプライアンス遵守

ライセンス契約の利用許諾や数量を把握しやすくなり、ライセンス違反などの法的リスクを低減することができます。

コスト削減

不要なIT資産の削減やライセンス数量の適切な管理により、無駄な支出を防ぐことができます。

業務効率化

IT資産の可視化により、必要なリソースの特定や迅速な問題解決が可能となります。

IT資産の種類

IT資産の管理対象は、主に次のようなものがあります。

ハードウェア資産

デスクトップPC、ノートPC、サーバー、スマートフォン、タブレット端末など、組織が業務を行うために使用する物理的なデバイスです。これらのデバイスは定期的な保守やアップデートが必要であり、適切に管理されないと故障や劣化による業務停止のリスクが高まります。

ソフトウェア資産

オペレーティングシステム、オフィスソフトウェア、セキュリティソフトウェア、業務用アプリケーション、などが含まれます。ソフトウェアのライセンス管理は特に重要で、ライセンスの期限切れや不正使用が発生すると法的な問題に発展する可能性があります。

ネットワーク資産

ルーター、スイッチ、ファイアウォール、VPN(仮想プライベートネットワーク)など、ネットワークインフラもIT資産に含まれます。これらの資産は組織のデータ通信を支え、セキュリティリスクの管理が重要です。

データ資産

組織が保有するデータ、顧客情報、取引履歴、知的財産などもIT資産の一部です。データの管理にはセキュリティが不可欠で、データ漏洩や不正アクセスが発生した場合、組織の信頼性や競争力が損なわれる恐れがあります。

クラウド資産

近年、クラウドベースのサービスやインフラ(IaaS、PaaS、SaaSなど)もIT資産として管理する必要が出てきました。これらのサービスの管理は、サービスプロバイダーとの契約内容や使用状況の把握が重要となります。

IT資産管理のライフサイクル

IT資産管理は、次のライフサイクルに沿って管理されます。

調達

新しいIT資産を選定し、購入やリース契約を行う段階です。この時点で、コストと必要な機能を評価し、最適な資産を選択することが重要です。

導入

調達したIT資産を実際に業務環境に導入して利用できる状態にするプロセスです。導入時には、設定やインストール、ネットワークへの接続、初期設定などが行われます。

保守(サポート)

IT資産が業務で使用されている間、定期的なメンテナンスやトラブル対応が必要です。ハードウェアの故障対応やソフトウェアの修正パッチなどがこの段階に含まれます。

更新(アップグレード)

技術の進歩に伴い、古いIT資産をアップグレードしたり、新しいバージョンのソフトウェアを導入することがあります。アップグレードにはコストがかかるため、計画的に行うことが求められます。

廃棄

IT資産の寿命が尽きた際には、安全に廃棄する必要があります。特にデータを含むハードウェアやソフトウェアは、適切な処理を行わないと情報漏洩のリスクが生じます。

IT資産管理ツールの導入と自動化

IT資産管理を効率的に行うためには、専用の管理ツールを導入することが一般的です。これらの管理ツールは、ハードウェアやソフトウェアの情報を自動で収集し、IT資産の利用状況や保守履歴、ライセンスの状態を一元管理します。 また、クラウドベースの管理ツールも多く提供されており、複数のオフィスがある場合でも一元管理が可能です。 そして、IT資産管理を自動化することで以下のようなメリットがあります。

人的エラーの防止

手動で行われる管理作業はミスが発生しやすく、IT資産の正確な把握が困難です。自動化ツールを使用することで、データの正確性が向上し、ミスを防ぎます。

時間の節約

IT資産の調査や更新、保守作業にかかる時間が大幅に短縮され、業務効率が向上します。

リアルタイムな監視

IT資産の状態をリアルタイムで監視できるため、問題の早期発見と対応が可能です。特にセキュリティ面での迅速な対応が求められる場合に有効です。

IT資産管理の重要性

IT資産管理は、現代の組織運営において欠かせないプロセスであり、リスク管理やコンプライアンス遵守、コスト削減などの観点において次のように重要な役割を果たします。

リスク管理とセキュリティの強化

IT資産の老朽化や未更新のソフトウェアは、サイバー攻撃のリスクを増大させます。IT資産管理を通じて、IT資産の状態を常に把握し、適切なタイミングで保守や更新を行うことで、リスクを最小限に抑えることが可能です。また、セキュリティパッチの適用状況やデータ暗号化の設定なども資産管理に含まれ、サイバー攻撃に対する防御力を高めます。

コンプライアンス遵守と法的リスクの回避

組織はライセンス契約や法規制を遵守しなければなりませんが、IT資産の管理が杜撰だと、ライセンス違反や著作権違反などにより、罰則や訴訟のリスクが発生します。IT資産管理を徹底することで、これらの法的リスクを回避し、コンプライアンスを確保することができます。

コスト削減と予算管理

適切なIT資産管理を行うことで、不要なIT資産の維持費や重複するライセンスの購入を防ぐことができます。IT資産のライフサイクル全体を見渡して計画的に管理することで、長期的なコスト削減につながります。特に大きな組織ではIT資産の規模が大きいため、効果的な資産管理がなされていない場合、無駄な支出が大きく膨らむ可能性があります。

業務の効率化と可視化

IT資産を一元的に管理することで、どの資産がどの部署で使用されているか、どのIT資産が更新の必要があるかといった情報を簡単に把握できるようになります。この可視化により、問題発生時の迅速な対応やIT資産の効率的な利用が可能となります。また、IT資産の利用状況を監視することで、不要なIT資産の廃棄やリースの見直しも行いやすくなります。

まとめ

このように、適切な管理体制を整えることで、IT資産のライフサイクル全体を最適化し、業務効率を向上させることができます。
さらに、IT資産管理ツールの導入や自動化を活用することで、人的エラーを防ぎ、リアルタイムな監視が可能となり、より高度な管理が実現します。
組織は、急速に変化するデジタル環境に対応し続けるために、IT資産管理を戦略的に導入し、継続的な改善を行うことが求められます。

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