「パッチチューズデー」とは?対応に追われない効率的なパッチ管理の方法
パッチチューズデーについてご存じでしょうか?パッチチューズデーは月に一度、Windowsのパッチが配信される、特にIT管理者にとって非常に重要な意味を持つ日です。つい最近「パッチチューズデー」という言葉を初めて目にしたIT管理者の方や、毎月パッチチューズデーに配信されるパッチの管理方法にお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。そこで、この記事ではパッチチューズデーの基本的な説明から、パッチによる脆弱性対策とその管理方法について詳しく解説します。
目次
パッチチューズデー
パッチチューズデーとは何か
パッチチューズデーは、Microsoftが米国時間で毎月第2火曜日にWindowsUpdateの更新プログラムを定期的にリリースすることから名づけられました。更新プログラムの定期配信は2003年にコンセプトが考案され、当初のパッチの逐次配信から、毎週の配信、毎月の定期配信へと整理されていきました。この日には、Windowsを含むMicrosoft製品の脆弱性が修正されることが多く、そのためIT業界では非常に重要視されています。
パッチチューズデーが設定された背景には、定期的なスケジュールを設けることで、管理者がパッチの管理と運用を計画しやすくする狙いがあります。定期的なセキュリティアップデートは、ユーザーの環境を安全に保つために不可欠であるため、パッチチューズデーは欠かせないものとなっています。
パッチ情報の確認方法
マイクロソフトの公式サイトでは、毎月のパッチチューズデーに関する更新情報
を随時確認できます。
年間のスケジュールを確認したい場合は、セキュリティ更新プログラムリリーススケジュール (2024 年)が役立ちます。
パッチの詳細を知りたい場合は、セキュリティ更新プログラムガイドが役立ちます。
セキュリティ更新プログラムガイドのページには、CVE識別番号※が記載されているのでどのような脆弱性が存在していたかを確認できます。また、その脆弱性に対していつのパッチで対応されたかなどの情報も記載されています。
※CVE識別番号・・・個別製品中の脆弱性を対象として、非営利団体のMITRE社が採番している識別子のこと。出元の異なる脆弱性情報が同じ脆弱性に関する対策情報であることの判断や、対策情報の相互参照や関連付けなどに利用できる。
(参考:IPA 共通脆弱性識別子CVE概説)
企業におけるパッチ管理
企業におけるパッチ管理において、システム管理者は月次の更新に対して計画的に対処する必要があります。特にWindowsUpdateを通じて提供されるパッチは、システムの脆弱性を迅速に修正するための重要な役割を果たします。
効果的なパッチ管理の方法
サイバー攻撃の手法の進化やインターネット接続デバイスの増加、システムやアプリケーションの複雑化に伴いパッチ適用対応は増大する一方です。限られた人員で対応するには以下の点をポイントに管理を行うと効率的です。
脆弱性の深刻度
CVSSスコアなどを参考に、脆弱性の影響度を評価します。特に、この脆弱性を利用した攻撃が確認されているかどうかという点には注意が必要です。
影響を受けるシステムの重要度
業務への影響が大きいシステムや、機密データを扱うシステムは優先的に対応します。CVSSのスコアと適用するシステムの重要度のバランスを考慮して、パッチを適用するシステムの順位付けをする必要があります。
人的リソースの効率的な利用
適用に時間がかかるパッチや、システムへの影響が大きいパッチは慎重に計画を立てる必要があります。計画性のない対応は、IT部門の時間とリソースを非効率的に使用することにつながり、対応人員の疲弊に繋りますので、深刻度や影響度によっては影響度のテストやシステムのダウンタイムにかかる工数を削減できるよう対応をまとめて実施することも有効です。
以上のポイントを実現するには日々の構成管理が欠かせません。構成管理により、組織内のIT資産を正確に把握し、各システムのバージョンや依存関係を理解、適用すべきパッチの特定、影響範囲の確認、適用順序の最適化が可能になります。いざ脆弱性情報が公開された際に、どのシステムが対象か慌てて調べることがないよう日々の構成管理を心がけましょう。サーバだけではなく、従業員が利用するPCもパッチチューズデーの対象となり、適切なパッチの適用が必要となります。
社内教育による理解の推進
PCを含む社内全体で適切なパッチの適用を推進するために、従業員への教育とトレーニングも実施することで、パッチ管理の重要性を理解し、セキュリティリスクを大幅に軽減できます。
パッチの適用が遅れた場合に発生するリスク
パッチを放置するとセキュリティリスクが大幅に増大し、攻撃者がシステムに侵入する機会が増えます。また、未更新のシステムに残存しているバグや動作上の問題から情報漏洩が発生するリスクも高まります。これにより企業や個人の重要な情報が第三者に不正に取得される危険性が出てきます。さらにシステムパフォーマンスも低下し、OSやアプリケーションの動作が不安定になることもあります。パッチは放置せず、速やかに適用することを推奨します。
パッチ適用管理ツール
WSUSによる管理のメリットとデメリット
PCに適用するパッチを組織で一括管理するツールとしては、WSUS(Windows Server Update Services)が主に使用されます。WSUSを活用することにより各パソコンへのパッチの適用状況をレポートで確認したり、パッチの適用可否を設定したりできるようになります。このように、WSUSを利用することで、組織内の複数のデバイスについてパッチの適用を一元的に管理することができます。 ただし、WSUSの利用にはサーバの用意が必要となり、利用のための準備と運用管理に手間がかかるというデメリットもあります。
IT資産管理ツールの利用
そこで、IT資産管理ツールを利用してみてはいかがでしょうか。 IT資産管理ツールでも、パッチの適用状況を一括で確認し、パッチ適用タイミングを複数台まとめて変更するといった、パッチ適用の一元管理ができます。 ただし、IT資産管理ツールの中にはWSUSと同様にサーバの管理が必要になるものもあります。そのため、IT資産管理ツールの中でもサーバ管理が不要となるクラウド型ツールの利用を推奨します。クラウド型サービスを利用することで、サーバ機器のメンテナンスやセキュリティ管理から解放され、本来のシステム管理に集中することができます。 なお、IT資産管理ツールにはサービス提供事業者が運用支援サービスを提供しているものもあるので、そのようなサービスを利用することで初期の準備時間やコストを減らすことができます。
まとめ
パッチチューズデーは、マイクロソフトが毎月定期的に提供するパッチの配信日です。元々は不定期だったパッチ配信がパッチチューズデーの配信に定期化されることで、パッチ管理と運用が以前より容易になりました。 とはいえ、配信されたパッチの適用はシステムを外部の脅威から守るために重要であることは十分認識していても、管理者にとってパッチの管理業務は面倒なものです。サーバ不要のクラウド型のIT資産管理サービスを活用し、手間を軽減しつつパッチ管理の効率化に取り組んでみてはいかがでしょうか。 ALSOKでは情報セキュリティの無料相談も行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
参考:Microsoft社 Patch Tuesday の20年を振り返る
(https://msrc.microsoft.com/blog/2023/11/reflecting-on-20-years-of-patch-tuesday-ja/)
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