SNS型投資詐欺とは?手口とその防止策を解説
近年、SNSの普及に伴い、新たな形態の特殊詐欺が急増しています。その中でも特に注目されているのが、SNSを利用した投資詐欺です。被害者は老若男女を問わず、その手口は巧妙化しており、一度被害に遭うと多額の損失を被る可能性があります。
本記事では、SNS型投資詐欺の手口を詳しく紹介し、その防止策について解説します。
目次
SNS型投資詐欺とは
SNS型投資詐欺は、FacebookやX(旧Twitter)、Instagram、マッチングアプリなどのソーシャルメディアを利用して行われる詐欺の一種です。典型的な手口は、詐欺師がSNS上で著名人になりすました魅力的なプロフィールでアピールしたり、高収益の投資案件や秘密の投資テクニックを持っているかのように装うことから始まります。彼らは洗練されたグラフや成功事例を共有し、短期間で大金を稼げると宣伝します。
被害者を信頼させるために、初めは少額の投資で高い利益を出すこともありますが、その後、より大きな金額の投資を求め、最終的には資金を持ち逃げするか、存在しない投資先に資金を移します。
また、恋愛感情を利用する「ロマンス投資詐欺」による手口も増えています。被害者は、単に金銭的損失だけでなく、個人情報の流出やID窃盗のリスクにも晒されます。
なぜSNS型投資詐欺は増加しているのか
SNSの普及とアルゴリズムの影響
SNS型投資詐欺が急増している背景には、いくつかの社会的要因があります。まず、SNSの爆発的な普及が挙げられます。総務省の「令和5年版 情報通信白書」によると、2022年のSNS利用率は全年代平均で80%に達し、特に20代では91.7%と高水準です。このような広範なSNS利用は、詐欺師にとって膨大な被害者候補を意味します。
また、SNSのアルゴリズムも詐欺増加の一因です。ユーザーが投資関連の投稿に反応すると、類似コンテンツが次々と表示されます。多くのSNSユーザーがレコメンド機能に影響されて購買決定をしています。このメカニズムは、投資詐欺コンテンツの拡散も加速させます。
(参考:総務省 情報通信白書)
投資への興味関心の増大
次に、投資への関心の高まりがあります。2014年からスタートしたNISA(少額投資非課税制度)や、老後2,000万円問題、コロナ禍でのオンライン投資や少なくなった収入を補うための副収入としての投資が注目されています。
また、仮想通貨の存在が一般的に知られるようになり、価格の急騰が報道されるたび、「乗り遅れ」を恐れる投資家が増加。個人投資家だけであった仮想通貨に大手企業やヘッジファンドも参入したことにより注目が集まるようになりました。
以上のように、SNSの普及率の高さ、投資への関心の増大、SNSのアルゴリズムの影響、そして経済不安といった要因が複合的に作用し、SNS型投資詐欺の増加を招いています。
典型的なSNS型投資詐欺の例
著名人や投資家へのなりすまし
誰もが知る有名なタレントや経済評論家、インフルエンサーになりすましてSNSを運用したり、投資家としての実績を誇示するため、札束や高級車、別荘などの写真を投稿してターゲットの信頼を得て投資案件を持ち掛けてきます。著名人や参加者の経歴、肩書から安心感を引き出して資金を引き出す手口です。
特に注意!ディープフェイクを使った動画でのなりすまし
近年特に注意すべき詐欺がディープフェイク技術を用いた生成AIによる詐欺です。
イーロン・マスク氏の動画をAIで作成、特定の仮想通貨プラットフォームの宣伝をするという動画がSNSに掲載され騙された方が存在します。今後も仮想通貨や生成AIを利用した詐欺は増加することが予想されるため注意が必要です。
恋愛を装った接近(ロマンス詐欺)
マッチングアプリ等を利用して出会ったターゲットに対し、熱心にメッセージを交わし、相手の興味や悩みに共感する姿勢を見せて信頼関係を築きます。他の詐欺例と同様に自身の投資成功体験を提示してターゲットに投資をさせます。恋愛感情や、被害にあった際の恥ずかしさから通報を躊躇するということを狙った手口です。また、ロマンス詐欺は、金銭的損害だけでなく、心の傷も負うことがあります。
チャットアプリによる投資グループ詐欺
「元証券マン」「海外ファンド経営者」など、権威のある肩書をもった管理人のグループチャットに参加したターゲットに対し、グループチャット内で「○○万円の利益が出た」など複数の参加者からのチャットが飛び交います。実際には参加者はサクラで利益の報告も虚偽です。
複数の人物からの投稿で安心感を与える手口で資金を引き出す手口です。
共通する手口
どの手口も最初は少額で利益を還元し、安心させてからより多くの資金をだまし取る手口が見られます。
「今なら10万円の投資で2ヶ月後に50万円になる」
と言われ、ユーザーは小口から始めます。
半信半疑なところもありましたが、約束通り2か月後に50万円の利益が振り込まれました。
「次は300万円投資すれば1,500万円になる」
と言われ、50万円が振り込まれたことから安心して投資してしまいます。提供されたWebサイトでは300万円の資金が実際に1,500万円に増えたように表示されているためお金を引き出そうとすると
「お金を引き出すための事務手数料として10%の150万円が必要になる」
と言われ振り込みますが、その後連絡が取れなくなり、詐欺にあったことを認識します。
SNS型投資詐欺の見抜き方
SNS型投資詐欺を見抜く鍵は、「あり得ないほど良い話」を疑うことです。正当な投資でも高リターンには高リスクが伴うのが原則です。「確実に」「絶対に」といった言葉や、短期間で数倍になるような話は要注意です。さらに、投資案件の詳細を尋ねても曖昧な回答しか得られない、あるいは「今だけの特別な機会」とせかされる場合は詐欺の可能性が高いです。正規の投資は、その仕組みや利益の源泉が明確に説明できるはずです。
また、投資先の会社が実在するか、金融庁のWebサイトで確認することができます。
免許・許可・登録等を受けている業者一覧 : 金融庁 (fsa.go.jp)
SNS型投資詐欺に遭わないための予防策
資産状況などの情報をSNSで発信しないようにする
予防の第一歩は、SNSでの個人情報の公開を最小限に抑えることです。公開プロフィールには、詳細な職歴や資産状況を載せないようにしましょう。詐欺師はこれらの情報を利用して、あなたに合わせた巧みな誘いをしてきます。次に、SNSで知り合った人からの投資の勧誘には、原則として応じないことです。
家族や友人に相談する
家族や信頼できる友人とのコミュニケーションも詐欺の予防に有効です。自身では気づかない詐欺の兆候や、投資の危険性を第三者の視点から指摘してもらえます。また、詐欺師は投資を急かしたり、秘密にするようせまったりして心理的な圧力をかけてきます。第三者に相談し、冷静に判断する必要があります。
逆に相談を受けた際に、詐欺の疑いがある場合は「匿名通報ダイヤル」にご連絡ください。
匿名通報ダイヤル:警察庁の委託を受けた民間団体が、対象事案として寄せられる通報を匿名で受け付け
詐欺被害にあったらすぐにすべきこと
投資詐欺の被害に遭ったら、冷静に以下の手順を踏んでください。
金融機関への連絡
- 銀行やクレジットカード会社に、取引の一時停止を依頼
- 詐欺師の銀行口座情報があれば提供。銀行間で詐欺口座として共有される
- 仮想通貨取引の場合、利用した正規の取引所にも報告
証拠保全
- 犯人や詐欺グループのSNSアカウント、投稿、DM、プロフィールをスクリーンショット
- チャットアプリの会話履歴を全て保存(バックアップ機能を利用)
- 偽の投資サイトのURLや画面、ログイン情報を記録
- 通話履歴、振込記録、関連メールも全て保存
専門機関への通報
- サイバー犯罪相談窓口(都道府県警察本部等)に通報。オンラインでも可能
警察庁 特殊詐欺対策ページ - 個人情報(パスポートのコピーなど)を詐欺師に渡していたら、それも警察に報告。ID盗難のリスクあり
- 詐欺の全容、証拠、被害額を詳細に説明できるよう準備しておく
最後に、家族や信頼できる人に相談しましょう。一人で抱え込まず、家族や専門家の助言を仰ぐことが回復への第一歩です。
まとめ
SNSを利用した投資詐欺の手口は今後も巧妙化していくことが予想されます。共通するのは、信頼関係を築いてから投資を持ちかける点です。詐欺師は高スペックな偽プロフィールを使い、グループ内で成功の雰囲気を演出。初回の少額投資で利益を出して信頼を得た後、高額投資へと誘導します。
被害に遭ったら、まず証拠を保全し、警察やサイバー犯罪相談窓口への通報、金融機関への連絡を速やかにおこない、一人で抱え込まず、家族や専門家に相談することが重要です。
SNSの即時性と閉鎖性を悪用する詐欺の予防には、投資話が出たら必ず警戒し、「絶対」「今だけ」といった言葉に惑わされず、冷静な判断を心がけましょう。