クラウド環境のセキュリティ対策として有効なCSPMとは?

クラウド環境のセキュリティ対策として有効なCSPMとは?
2024.10.31

DXの加速に伴い、多くの企業がクラウドコンピューティングを採用しています。クラウドの柔軟性と拡張性はビジネスの俊敏性を高め、イノベーションを促進する一方で、新たなセキュリティ課題をもたらしています。従来のオンプレミス環境とは異なりクラウド環境は動的で複雑であり、セキュリティの脅威も日々進化しています。このような状況下で、企業はクラウド資産を適切に管理しセキュリティリスクを最小限に抑える必要があります。本コラムでは、そうしたクラウドの安全利用のための対策として有効なCloud Security Posture Management(CSPM)についてわかりやすく解説します。

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目次

CSPMの定義

CSPMとは

CSPMとは、「Cloud Security Posture Management」の略であり、クラウド環境におけるセキュリティ態勢を継続的に評価、監視、改善するための包括的な考え方です。
CSPMのソリューションは、クラウドサービスプロバイダー(CSP)のAPIを通じて、リアルタイムでクラウド環境のセキュリティ状況を把握し、潜在的な脆弱性や設定ミスを特定します。これにより、組織はクラウド資産を効果的に保護し、セキュリティインシデントが発生するリスクを軽減することができます。

CSPMの運用イメージ

引用:IPA 「クラウドセキュリティ ~設定ミスとの付き合い~」を参考に当社にて作成

CSPMの特長

CSPMの主な特長は以下の点です。

  • 動的な環境への対応
    クラウド環境は常に変化しており、CSPMはこの動的な性質に適応して、リアルタイムで監視と対応を行います。
  • 自動化
    高度な自動化機能を提供し、設定ミスの検出から修正まで、多くのプロセスを自動化します。
  • マルチクラウド対応
    多くの組織が複数のクラウドプロバイダーを利用している現状を踏まえ、CSPMはマルチクラウド環境を一元的に管理します。
  • コンプライアンスの統合
    CSPMは、様々な業界標準や規制要件に対するコンプライアンスチェックを統合し、継続的な遵守を支援します。
  • セキュリティとDevOpsの融合
    CSPMは、セキュリティをソフトウェア開発ライフサイクルに組み込むDevSecOpsの実践を促進します。

CSPMが必要とされる背景

クラウド環境の複雑化

クラウドコンピューティングの普及に伴い、企業のIT環境は急速に複雑化しています。多くの組織は複数のクラウドサービスを利用し、ハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境を構築するようになりました。 各クラウドプラットフォームでは、独自の管理ツールやインタフェースが提供されているため、各クラウド環境に一貫したセキュリティ設定を行うことが難しくなっています。
さらにクラウドサービスでは、定期的に新たな機能が追加されることも多いため、セキュリティ設定を最新かつ最適な状態にどう保っていくかも大きな課題となっています。

セキュリティリスクの増大

クラウド環境では、従来のオンプレミス環境とは異なるセキュリティリスクが存在します。
例えば、クラウドサービスの誤った設定がデータ漏洩やセキュリティ侵害の主要な原因となったり、IT部門の管理外でクラウドサービスが利用されることで、セキュリティホールが生まれたりするリスクがあります。 さらに、クラウド上に分散して保存されるデータの保護や管理も適切に行わなければオンプレ環境よりもデータ漏えいのリスクが高くなります。

CSPMの主要機能

CSPMの主要な機能は以下のとおりです。

可視化と資産管理

  • クラウドリソースの包括的な把握:
    全てのクラウドアカウント、サービス、リソースを一元的に可視化します。
  • リアルタイムの資産管理:
    新規に作成されたリソースや変更された設定をリアルタイムで追跡します。
  • リソース間の関係性の把握:
    クラウドリソース間の依存関係や接続状況を視覚化し、潜在的なリスクを特定します。

この機能により、組織はクラウド環境の全体像を把握し、効果的なセキュリティ管理の基盤を構築することができます。

設定ミスの検出と修正

クラウドセキュリティインシデントの多くは、設定ミスに起因しています。CSPMは以下の機能によりこうしたリスクを軽減することができます。

  • セキュリティベストプラクティスとの比較:
    クラウド設定を業界標準やベストプラクティスと自動的に比較し、逸脱を検出します。
  • リアルタイムアラート:
    設定変更やセキュリティ違反をリアルタイムで検知し、即時に通知します。
  • 自動修復:
    検出された設定ミスを自動的に修正する機能を提供し、人的ミスを最小限に抑えます。

これらの機能により、組織はクラウド環境のセキュリティ態勢を常に最適な状態に保つことができます。

監視と報告

CSPMは、複雑化する規制やガイドラインへの対応を支援します。

  • 継続的な評価:
    クラウド環境が各種規制やフレームワークに準拠しているかを継続的に評価します。
  • カスタマイズ可能なポリシー:
    組織固有のセキュリティポリシーや業界特有の要件に基づいたカスタムルールを作成・適用できます。
  • 包括的なレポート生成:
    監査や経営層向けの詳細なレポートを自動生成します。

これにより、組織は各種規制やガイドラインへの対応状況を常に把握し、必要な是正措置を迅速に講じることができます。

脅威検知と対応

CSPMは、セキュリティ脅威の早期検知と迅速な対応を支援します。

  • 異常検知:
    機械学習やAIを活用して、通常とは異なるクラウド利用パターンや潜在的な脅威を検出します。
  • インシデント対応の自動化:
    検出された脅威に対して、事前定義されたプレイブックに基づいた自動対応を実行します。
  • セキュリティオーケストレーション:
    他のセキュリティツールと連携し、包括的な脅威対応を実現します。

これらの機能により、組織はセキュリティインシデントのリスクを最小限に抑え、迅速な対応を行うことができます。

CSPMの導入メリット

セキュリティ態勢の強化

CSPMにより、クラウド環境の脆弱性を常時監視し、迅速に対処することができるようになるため、攻撃対象となる可能性が低減します。
また、複数のクラウド環境で一貫したセキュリティポリシーを適用することができるため、セキュリティギャップを最小化し、より堅牢な防御態勢を構築できます。
さらに、リアルタイムの脅威検知と自動化された対応により、セキュリティインシデントの影響を最小限に抑えることが可能です。

運用効率の向上

複数のクラウド環境を一元的に管理することで運用の複雑さを軽減し、効率を高めます。 また、自動化されたチェックと修正機能により、人的ミスによるセキュリティリスクを最小限に抑えることができます。

コスト削減

CSPMの導入は長期的にはコスト削減にもつながります。 事前に脆弱性を特定・対処することで、高コストなセキュリティ侵害を防ぐことができます。また、未使用または過剰に割り当てられたクラウドリソースを特定し、 コスト効率を改善することも可能です。さらに、各種規制やガイドラインの対応管理も自動化されるため、監査対応や罰金のリスクが低減します。

ビジネス継続性の確保

セキュリティリスクを事前に特定し対処することで、サービス中断のリスクを低減し、ダウンタイムを最小化します。 データ漏洩などの重大なセキュリティインシデントを防ぐことで、組織のレピュテーションを守ることができます。

CSPMツールの選定ポイント

CSPMツールを選定する際は、自社環境に適したツールの選ぶために以下の点を考慮することが重要です。

  • クラウド環境との互換性:
    利用しているクラウドプラットフォーム(AWS、Azure、GCP等)との互換性を確認する。
  • スケーラビリティ:
    組織の成長に合わせて拡張可能なソリューションを選択する。
  • 統合性:
    既存のセキュリティツールやワークフローとの統合のしやすさを評価する。
  • 自動化機能:
    設定ミスの自動修正やセキュリティ対応の自動化レベルを確認する。
  • レポーティング機能:
    経営層や監査人向けの分かりやすいレポートが生成できるかを確認する。
  • コスト:
    初期導入コストだけでなく、長期的な運用コストも考慮する。
  • サポートとトレーニング:
    ベンダーのサポート体制やトレーニングプログラムの充実度を確認する。

CSPMの将来展望

AIとの統合

CSPMの将来において、AIとの更なる統合が期待されています。機械学習モデルを用いることで、より複雑で巧妙な脅威を検出する能力が大幅に向上すると予想されます。 これにより、従来の規則ベースの検出では見逃されていた潜在的な脅威を、より早い段階で特定することが可能になるでしょう。
また、AIによる意思決定支援により、セキュリティ対応の自動化レベルが更に向上すると考えられます。 複雑な状況下での判断や、大量のデータに基づく迅速な意思決定が必要な場面で、AIが人間の専門家を支援し、より効果的かつ効率的な対応を可能にするでしょう。

自動化の進化

CSPMツールの自動化機能は、今後更に進化していくと予想されます。特に注目されるのは、セルフヒーリング機能の向上です。 検出された問題を自動的に修正する能力が飛躍的に向上し、人間の介入をさらに減らすことが可能になるでしょう。
また、ポリシーの自動最適化機能の登場も期待されます。使用パターンやリスク分析に基づいて、セキュリティポリシーを自動的に最適化する機能が実現すれば、 常に変化するクラウド環境やセキュリティ脅威に対して、より柔軟かつ効果的に対応することが可能になるでしょう。

マルチクラウド環境への対応

クラウド利用の多様化に伴い、CSPMツールのマルチクラウド対応はさらに強化されていくと予想されます。 特に重要となるのは、異なるクラウドプロバイダー間でより一貫したセキュリティポリシーの適用を可能にする機能です。 これにより、複数のクラウド環境を利用する組織が、統一的なセキュリティ基準を維持しやすくなります。
また、クロスクラウド分析の機能も進化すると考えられます。複数のクラウド環境を横断した高度なセキュリティ分析が実現することで、 クラウド間の相互作用や依存関係に起因するセキュリティリスクを特定し、対処することが可能になるでしょう。


これらの進化により、CSPMは今後さらに強力で不可欠なツールとなり、複雑化し続けるクラウド環境におけるセキュリティ管理の中心的な役割を果たしていくことが期待されます。

まとめ

CSPMは、急速に変化し複雑化するクラウド環境において、組織のセキュリティ態勢を強化する上で不可欠なツールとなっています。 今後、AIとの統合や自動化の進化、マルチクラウド環境への対応強化などにより、CSPMの機能はさらに高度化していくことが予想されます。組織は、これらの技術動向を注視しつつ、自社のクラウド戦略に合わせてCSPMを効果的に活用していくことが重要です。
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