継続的な脅威管理を実現するCTEMとは?注目される理由について解説

継続的な脅威管理を実現するCTEMとは?注目される理由について解説
2024.11.20

急速なデジタル化に伴い、サイバーセキュリティの脅威は日々進化を続けています。 近年のサイバーセキュリティ環境は、クラウドコンピューティングやIoTの普及によりますます複雑化しており、従来の定期的な脆弱性診断などによるセキュリティ評価だけでは、日々変化する脅威に対応できなくなってきています。 そうした中で、組織が直面する脆弱性や脅威を継続的に管理する新しいアプローチとして、CTEM(Continuous Threat Exposure Management)が注目を集めています。本コラムでは、CTEMの概要や特徴、その必要性について詳しく解説します。

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目次

CTEMとは

CTEMは、米国の調査会社であるガートナー社が2022年に提唱した考え方であり、「Continuous Threat Exposure Management:継続的脅威露出管理」の略称です。これは、組織が直面する脆弱性や脅威を継続的に特定、評価しながらリアルタイムで対応するための体系的な考え方を指します。
従来では、四半期ごとや年次での脆弱性診断が一般的でしたが、CTEMではリアルタイムでの監視と対応を実現します。 イメージとしては、従来のセキュリティ評価が定期的な「点」での評価だったのに対し、CTEMは「線」による継続的な監視・評価を実現します。これにより、新たな脆弱性が発見された際にも、迅速に対応を行うことが可能になります。

CTEMが注目される理由

デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速により、企業のITインフラストラクチャーは急速に拡大・複雑化しています。クラウドサービスの利用拡大、リモートワークの普及、IoTデバイスの増加により、攻撃対象となる領域(アタックサーフィス)が著しく拡大しています。 そのような状況下で、日々報告される脆弱性の件数は年々増加傾向にあり、そうした脆弱性を悪用したサイバー攻撃も増えています。また、サイバー攻撃も高度化・複雑化の一途を辿っており、AIを活用した攻撃手法の出現や、ランサムウェアによる被害も深刻化しています。

こうした脅威の変化により、これからは従来の定期的なセキュリティ評価では対応が追い付かなくなっていく恐れがあり、よりリアルタイムで継続的な脅威への対応の必要性が高まっていることから、CTEMが注目されています。

CTEMを構成する5つのステップ

CTEMは以下の5つのステップを継続的に行います。

図:CTEMのステップ

図:CTEMのステップ

スコープの定義(Scoping)

組織の資産を把握し、保護すべき対象範囲を定義します。

  • ビジネスクリティカルな資産の特定
  • 保護すべき重要データの把握
  • 規制要件の確認
  • 対象範囲の明確化

発見(Discovery)

定義されたスコープ内での脆弱性や露出している部分を特定します。

  • 資産の自動発見
  • 脆弱性スキャン
  • 設定ミスの検出
  • 未管理の資産の発見
  • 新たな脅威の特定

優先順位付け(Prioritization)

発見された脆弱性や露出についてリスク評価に基づいた優先順位付けを行います。

  • 脆弱性の深刻度評価
  • ビジネスへの影響度分析
  • 攻撃可能性の評価
  • リスクスコアリング
  • 対応の優先度決定

検証(Validation)

優先順位に従って対策を実施し、その有効性を検証します。

  • 対策の実施テスト
  • 有効性の確認
  • 残存リスクの評価
  • 新たな対策の必要性判断
  • テスト結果の分析

動員(Mobilization)

検証された対策を本番環境に展開し、実際の対応を実施します。

  • セキュリティ対策の本番適用
  • 必要なリソースの配置
  • チーム間の連携
  • 進捗管理
  • 結果の測定と報告

これらの5つのステップは1回で終わるものではなく、継続的なサイクルとして実施されます。このサイクルにより、組織は常に変化する脅威に対して効果的な対応を維持することができます。

類似サービスとの違い

CSPM(Cloud Security Posture Management)との違い

CSPMはクラウド環境の設定ミスや準拠性に特化していますが、CTEMはより広範な脅威露出の管理を目的としています。
主な違いは以下の通りです。

項目 CSPM CTEM
スコープ クラウド環境のみを対象 オンプレミス環境も含めた包括的な管理を提供
機能 設定チェックが中心 脆弱性管理、脅威検知、リスク評価など、より広範な機能を提供
アプローチ 準拠性重視のアプローチ リスクベースのアプローチ

ASM(Attack Surface Management)との違い

ASMは外部からの攻撃表面の管理に重点を置きますが、CTEMは内部システムも含めた総合的な脅威管理を行います。
主な違いは以下のとおりです。

項目 ASM CTEM
管理範囲 外部から見える攻撃表面に焦点 内部の脆弱性も含めて管理
アプローチ 攻撃者視点でのスキャンが中心 組織全体のリスク管理を重視

CDR(Cloud Detection and Response)との違い

CDRはインシデントの検知と対応に焦点を当てていますが、CTEMは予防的な脅威管理を重視します。
主な違いは以下のとおりです。

項目 CDR CTEM
タイミング インシデント発生後の対応が中心 事前予防を重視
スコープ セキュリティインシデントへの対応に特化 包括的なリスク管理を提供

CTEMの導入メリット

CTEMを導入することで、以下のようなメリットがあります。

セキュリティ体制の強化

包括的な可視性の確保

組織内の全ての資産とそのセキュリティ状況をリアルタイムで把握できるようになります。従来は把握が難しかったシャドーITの発見や、クラウドリソースの管理も容易になります。

迅速な脆弱性対応

新しい脆弱性が公開された際に、影響を受ける可能性のあるシステムを即座に特定し、対応を開始できます。

インシデント対応の時間短縮

早期検知による被害の最小化

異常の早期検知により、インシデントの影響を最小限に抑えることができます。

自動化された対応プロセス

一般的な脅威に対する対応やインシデントレポートの作成が自動化されるため、インシデント対応にかかる時間を削減することができます。

経営層へ説明

直観的なダッシュボード

セキュリティリスクの状況を、経営層でも理解しやすい形で可視化します。例えば、リスクスコアの推移や、主要なKPIをグラフィカルに表示できます。

ビジネスインパクトの明確化

セキュリティリスクをビジネスへの影響度で表現することで、投資判断や優先順位付けがしやすくなります。

その他の副次的なメリット

コンプライアンス対応の効率化

継続的なモニタリングとレポーティング機能により、各種規制やコンプライアンス要件への対応が容易になります。

セキュリティチームの生産性向上

日常的な作業の自動化、例えば、セキュリティパッチの自動適用や脆弱なサービスの自動停止、セキュリティ状態の自動レポート作成機能などにより、セキュリティチームはより戦略的な業務に注力できるようになります。

導入時の注意点と課題

効果的な導入プロセス

CTEMを効果的に導入するためには、まず目標と現状を明確にし、適切な計画を立案することが求められます。社内チームの統一した理解を図り、技術的な準備を進めることが重要です。
次に、範囲を絞った形で実際の運用を確認し、必要に応じて調整を行います。このプロセスで得られたデータを元に全体展開を進めるとともに、定期的な評価とフィードバックを行い、CTEMの継続的な改善を図ります。

課題

技術的な課題

CTEMを導入する際には、技術的な課題としてシステム統合の複雑さが挙げられます。既存システムとの統合も重要な課題です。特に、レガシーシステムとの連携や、複数のセキュリティツールとの統合には、慎重な計画が必要です。不十分な統合は脅威検出の精度に影響を及ぼす可能性があります。

組織的な課題

社内のセキュリティポリシーとCTEMの運用方針の整合性が必要であり、従業員のトレーニングも欠かせません。適切なリソース配分と役割の明確化が、CTEMを最大限に活用する鍵となります。

CTEMはまだ早いと感じた方は

CTEMの重要性について説明してきましたが、組織の規模などによっては検討が難しいケースもあると思います。
そうした場合には、まず社内で利用しているIT資産の管理から始めてみることをおすすめします。
社内で利用するIT資産の管理は、サイバーセキュリティの初めの一歩です。自社で利用中のシステムはいくつあり、どのようなデータが保管されているのか。何台のPCやタブレットなどを利用していて、どのようなソフトウェアが使われているのか。 そうした情報を知ることで、初めて組織として本当に守るべき資産を特定することができ、最適なセキュリティ対策を行うことができます。
ALSOKでは、IT資産管理に必要な機能を厳選したお得なWeb限定プランを提供しています。運用サポートも付いており、運用にかかる負担を最小限に抑えることができるので、お気軽にお問い合わせください。

進化を続けるCTEM

CTEMは新しいアプローチであり、今も進化を続けています。特にAIとの連携強化は、CTEMの発展における重要なトレンドです。機械学習を活用した脅威情報の検知や、リスク評価およびその優先順位付けなどの精度向上が期待されています。 クラウドセキュリティとの統合も進んでおり、マルチクラウド環境における統合的な脅威管理が可能になりつつあります。

まとめ

CTEMは、現代のサイバーセキュリティ課題に対する効果的なソリューションとして、その重要性が増しています。組織がデジタル化を推進する中、CTEMの導入はセキュリティリスクの効果的な管理と、ビジネスの継続的な成長を両立させるための重要な要素となっています。 今後は、AI技術の発展やクラウドサービスとの統合が進み、CTEMの機能はさらに進化していくことが予想されます。組織は、これらの変化に対応しながらCTEMを効果的に活用していくことが求められます。
CTEMはまだ早いと考えている方も、まずはできることからスタートし、少しずつ自社のセキュリティを高めていきましょう。
ALSOKでは情報セキュリティの無料相談も行っておりますので、ぜひご気軽にご相談ください。

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