フォレンジックとは?デジタルフォレンジックの活用と調査の流れ

情報セキュリティに関する言葉で、「フォレンジック」「フォレンジック調査」などの言葉を聞くことがあると思います。特にIT分野では「デジタルフォレンジック」と呼ばれる調査について、耳にする機会も多いでしょう。
そこでこの記事では、デジタルフォレンジックという言葉の意味や実施する調査の内容、デジタルフォレンジックの一連の流れなどについてご説明します。
目次
フォレンジックとは
フォレンジック(Forensic)は、直訳すると「法廷の」という意味となり、法的証拠を見つけるために実施する鑑識調査や、情報解析にともなう技術・手順などを指します。
ITにおけるデジタルフォレンジック(digital forensics)とは、コンピュータやデータの記憶媒体の中に残された証拠を調査・分析することを指す用語です。
デジタルフォレンジックは、大きく分けて以下3つの種類に分けられています。
3つのデジタルフォレンジック
・コンピュータフォレンジック
コンピュータ本体のハードディスクに保存された情報を解析する技術を指すものです。具体的には、そのコンピュータで実行された操作の履歴や、ハードディスクなどの記憶媒体に保存されたデジタルデータの復元を行います。
・モバイルフォレンジック
スマートフォンなど、モバイル端末に保存された情報を解析する技術です。コンピュータフォレンジックと同じようにモバイルデバイスの解析を行って証拠を確保します。たとえば携帯電話・スマートフォンの場合は、通話履歴やアクセスの記録、アプリ使用記録などの解析を行います。
・ネットワークフォレンジック
ネットワーク機器の解析を行い、社内外に送受信されたパケットが、いつ、どのような経路を通り、通過した機器は何であったかなどを分析する技術です。おもに不正アクセスや機密情報の漏えいなど、情報セキュリティ関連の調査において不審な動作を行った端末の特定に用いられています。
デジタルフォレンジックを行う目的
デジタルフォレンジックは、デジタル環境で発生する様々な事案において、電磁的証拠を収集・分析する科学的調査手法です。その実施目的は多岐にわたり、組織の安全性向上と法的対応の両面で重要な役割を果たします。
インシデント対応と原因究明
サイバー攻撃による被害が発生した際、デジタルフォレンジック調査は事案の全容解明に不可欠です。攻撃者の侵入経路や使用された手法、攻撃の影響範囲など、詳細な技術的分析を通じて事象の全体像を把握します。この分析結果は、即時の被害対策だけでなく、将来的なセキュリティ強化策の立案にも活用されます。特に、システムの脆弱性や運用上の問題点を特定することで、より効果的な再発防止策の実施が可能となります。
法的対応のための証拠収集
デジタルフォレンジックは、法的紛争や訴訟に対応する際の重要な証拠収集手段として機能します。電子メール、文書ファイル、ログデータなど、デジタル機器に残された電磁的記録は、事案の経緯や関係者の行動を証明する有力な証拠となり得ます。特に、証拠の法的有効性を確保するため、データの収集から保管まで、厳格な手続きに従って実施される必要があります。また、自社が訴訟に直面した際の防御準備としても、デジタルフォレンジックによる証拠の事前収集と分析は重要な役割を果たします。
コンプライアンスと不正抑止効果
デジタルフォレンジックの存在は、組織内部での不正行為に対する強力な抑止力として作用します。従業員の電子的な活動が記録され、必要に応じて調査対象となり得ることへの認識は、不正行為の防止に大きく貢献します。さらに、調査事例を適切な形で組織内に共有することで、セキュリティ意識の向上やコンプライアンス文化の醸成にもつながります。このような予防的効果は、組織全体のリスクマネジメントにおいて極めて重要な要素となっています。
デジタルフォレンジックによる調査の流れ

デジタルフォレンジックは、どのような手順で調査が行われるのでしょうか。ここではデジタルフォレンジックの一連の流れについてご紹介します。
1.情報の収集
まず、解析対象のコンピュータに記録されているデータをすべて集めます。その後、全データの中から証拠となりうる情報を特定し、改ざんや消去が行われないようそれらの情報を保全します。特定された情報を証拠として取り扱うには、事案が発生した時点の状態で記録されている必要があるためです。
2.検査
重要なデータが削除されていたり、盗用や改ざんが行われないよう暗号化などが行われていたりすることも少なくありません。それらのデータを復元・可視化し、必要に応じてフィルタリングによる情報の絞り込み、圧縮データの展開なども行います。
3.分析
収集や検査によって各種データの整理を行ったら、それらの記録や情報を解析します。いつだれが作成し、事案発生までにどのような操作や変更がされたかなどを、解析ツールを用いて可能な限り詳細な分析を行います。
4.報告
分析作業を終え証拠が特定できたら、それらの調査結果についてレポートの作成を行います。レポートは法定での証拠としての活用だけでなく、システム障害などその他トラブルがあった際にも事実を証明するための資料にもなります。またレポート内容をもとに社内のセキュリティ対策強化にもつなげられるでしょう。
注意点
フォレンジックを実施する際には、証拠の保全性と完全性の確保が最も重要です。調査対象となるデジタル機器やデータに対して、安易な操作や変更を加えることは厳禁となります。証拠収集の過程で原本データが改変されてしまうと、法的証拠力が失われ、調査結果の信頼性が著しく低下してしまうためです。また、調査担当者には高度な専門知識と経験が求められ、証拠収集から分析、報告書作成に至るまで、一貫した手順と方法論に従って作業を進める必要があります。
フォレンジックに必要な知識
デジタルフォレンジックは緻密で詳細な調査となるため、行うためには以下の高度な専門知識が求められます。
- コンピュータ・ネットワークについての知識
- 法的手続きに関する知識
- 情報セキュリティに関する知識
上記に関する、非常に高度な知識を持っていなければデジタルフォレンジックの実施は難しいため、基本的にはプロに調査を任せることとなります。
デジタルフォレンジックは知識や経験に加え、緻密な調査を行える環境を備えたプロの機関へ依頼することが必須といえます。それらが不十分な状況で調査を行っても、集めた証拠の誤消去やマルウェア感染を拡大させてしまうなどのミスが発生する可能性もあるでしょう。実績のある専門機関に依頼し、確実な調査を行ってもらうことをおすすめします。
フォレンジックに対する課題
デジタルフォレンジック調査には、いくつかの重要な課題が存在します。まず、調査に要する時間とコストが膨大になる可能性が高いことが挙げられます。高度な専門知識を持つ人材の確保や、専用の解析ツールの導入には相当な投資が必要です。また、調査対象となるデータ量が膨大である場合、解析に要する時間が長期化し、ビジネスへの影響も無視できません。さらに、暗号化されたデータの解析や、クラウドサービス上のデータの収集など、技術的な制約による調査の限界も存在します。
ログ取得の樹上性
効果的なフォレンジック調査を実施するためには、適切なログの取得と保管が不可欠です。システムログ、アクセスログ、操作ログなど、様々な種類のログを包括的に収集し、改ざんを防止しつつ長期保存する必要があります。特に、ログの生成時刻の正確性を担保するためのタイムスタンプの同期や、ログの完全性を証明するための署名付与など、技術的な考慮も重要です。また、ログの保存期間や保管場所、アクセス権限の管理など、運用面での規定も明確に定める必要があります。
ALSOKのサイバーセキュリティソリューションでセキュリティインシデントを予防する
情報セキュリティの強化を検討する際は、インシデントの発生を未然に防ぐことに加え、何らかの事案が起こった後の適切な対応についても考えておくことが必要です。
ALSOKでは、「サイバーセキュリティソリューション」をご提供しています。いつ発生するか予測できない情報漏洩などの事案に備え、警備会社としてのALSOKならではのノウハウで万一の事態を未然に防ぎます。セキュリティ対策の強化をご検討中の方は、ぜひALSOKまでお気軽にご相談ください。
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まとめ
今回は、デジタルフォレンジックについてご紹介しましたが、企業の情報セキュリティの基本はセキュリティインシデントの発生を予防することです。各種端末の動作を確実に監視し、不審な兆候があればその時点で事案発生を防げる状況にしておかなければなりません。そのうえで、何か起こってしまっても早期かつ確実な対処を可能としておくことが重要です。
もし企業のセキュリティ対策に関して不明点や検討事項などあれば、お気軽にALSOKまでご相談ください。