地政学的リスクがもたらすサイバー攻撃の実態

地政学的リスクがもたらすサイバー攻撃の実態
2025.02.17

昨今、地政学的リスクの影響により、サイバー攻撃が増加していることに関心を寄せる声が高まっています。
国際的な緊張が高まる中で、自分の会社や個人情報がどのようにしてリスクにさらされているのか、心配されている方も多いのではないでしょうか。そこで、この記事では、地政学的リスクに起因するサイバー攻撃について簡単に解説し、その実態を明らかにします。

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目次

地政学的リスクとは何か

地政学的リスクに起因するサイバー攻撃は、重要インフラに対する攻撃や国家機関が直接・間接的に支援する形で行われる高度なサイバー攻撃です。これらの攻撃では、国家レベルの予算と人材を投入し、最先端の攻撃ツールや脆弱性を利用することが特徴です。また、長期的な作戦計画に基づいて実行されることが多く、機密情報の窃取、重要インフラの機能停止、政治的・軍事的優位性の確保、経済的損害を与えるなどを目的としています。

攻撃のターゲット

ターゲットとしては、政府機関だけでなく、エネルギー、金融、通信などのインフラストラクチャーが挙げられます。
これらの分野は、社会の基盤を支えるものであり、その機能が停止すると国家全体の混乱を招くことになります。
また、情報技術の発展により、防衛産業や医療機関も狙われることが増えてきています。これらの機関が被害を受けると、国家の安全保障に直接的な影響を及ぼすだけでなく、市民の日常生活にも甚大な影響を与えることになります。

代表的な攻撃手法

地政学的リスクに起因する攻撃には特有の戦術が存在します。
特定の国のインフラや政治的な情報を狙うために、遠隔操作のトロイの木馬やゼロデイ攻撃が用いられることが多く見られます。また、政治的な目的を持つハクティビズムも頻繁に見られます。これは、特定の政策や行動に対する抗議活動として行われ、攻撃者はウェブサイトの改ざんやサービス拒否攻撃を通じてメッセージを伝えます。
このような攻撃の背後には、しばしば偽情報の拡散やサプライチェーン攻撃も関与しています。偽情報の拡散は、社会不安を煽り内部対立を生む目的で利用され、信頼性のあるメディアやソーシャルネットワークを通じて意図的に誤情報を流布します。また、サプライチェーン攻撃では、企業の取引先やベンダーの弱点を突いて、最終的な目標まで到達する戦略が取られます。これにより、直接的に防御を突破するのではなく、迂回的に攻撃を成功させることが可能となります。
実際の攻撃手法は常に進化しており、攻撃者は新しい技術や脆弱性を探り続けています。このような地政学的リスクに起因するサイバー攻撃に対抗するためには、徹底した監視体制と迅速な対応力が求められます。技術的な防御策だけでなく、情報収集能力や国際的な協力も重要な要素となります。

地政学的リスクに起因するサイバー攻撃の事例

2025年1月8日、警察庁は、「MirrorFaceによるサイバー攻撃について(注意喚起)」(※) を公表しましたが、この資料では、2019年以降における日本国内の学術、シンクタンク、政治家等に対する標的型攻撃メールや、半導体、情報通信、航空宇宙等の各分野への脆弱性を悪用した攻撃など、MirrorFaceによる攻撃キャンペーンについて解説されています。
こうしたMirrorFaceによる攻撃キャンペーンは、日本の安全保障や先端技術に関する情報の窃取を目的とした、中国の関与が疑われる組織的なサイバー攻撃活動であると評価されています。また、2023年6月以降に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が受けたサイバー攻撃も、警察庁はMirrorFaceが関与としている判断しています。
※ MirrorFace によるサイバー攻撃について (注意喚起)| 警察庁 内閣サイバーセキュリティセンター 2025年1月8日

2025年の情報セキュリティ脅威ランキングでの位置付け

2025年1月30日に情報処理推進機構(IPA)が発表した「情報セキュリティ10大脅威2025」に、今回初めて地政学的リスクに起因するサイバー攻撃がランクインし、ますます注目される存在となっています。
地政学的リスクに起因するサイバー攻撃は、従来のサイバー脅威と比較して国家安全保障に直結するため、解決すべき課題が複雑化しています。これに対応するためには、国際的な協力や情報共有の強化が必須であり、また企業や組織にはグローバルな視点でのリスク評価と防御戦略が求められるでしょう。

他の脅威と比較した重要性

地政学的リスクがもたらすサイバー攻撃は、他の脅威と比較して非常に重要となります。その理由の一つは、国家間の緊張や国際的な情勢の変動が直接的に影響を及ぼす点にあります。
さらに、国家レベルで組織された高度な技術力を持った攻撃者が関与することが少なくありません。攻撃の規模や洗練度が他の脅威と比較して突出しています。 加えて、地政学的リスクに起因する攻撃は、時として予測が難しいため、対策が複雑であることも重要な要因となります。政治的な意図に基づくものであるため、急激な情勢変化によりリスクの内容が迅速に変化し得ます。
以上のような特性から、他のサイバー脅威とは異なり、長期的かつ多層的な対策が求められます。

企業や組織が取るべき対策

企業や組織が地政学的リスクに起因するサイバー攻撃から自身を守るためには、まず最初に徹底したリスク評価を行うことが重要です。これは、地政学的リスクがどのように自社に影響を及ぼす可能性があるのかを理解するための一歩です。
その上で、予防策としては、最新のサイバーセキュリティ技術の導入と、継続的な監視システムの整備を行う必要があります。サイバー攻撃は常に進化しているため、セキュリティ体制を定期的に見直し、最新の脅威に対応できるようにすることが欠かせません。
さらに、従業員に対する教育や訓練も不可欠です。これにより、組織内部からの事故や不注意が原因となるセキュリティインシデントを未然に防ぐことができます。

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リスク評価

リスク評価には、対象の組織が直面する地政学的リスクの特定が含まれます。この評価は、地域間の政治的緊張や貿易戦争、国際紛争がデジタル空間へどのように影響を及ぼすかを分析することから始まります。例えば、特定の国との関係が悪化すると、その国からのサイバー攻撃のリスクが高まることがあります。
評価の結果は、情報セキュリティの優先順位を設定するための指針となります。

予防策

まず、ネットワークの監視体制を強化し、リアルタイムでの異常検知を可能にするセキュリティソリューションの導入が重要です。これには、高度なAI技術を活用した侵入検知システムや、機械学習による予測分析が含まれます。これらのツールは、潜在的な攻撃の兆候を早期に察知し、防御態勢を迅速に整えるために不可欠です。
次に、社内のセキュリティ意識を高めるための教育プログラムの実施も欠かせません。従業員一人ひとりが攻撃者の標的となる可能性があるため、フィッシングメールやマルウェアを仕掛けられたファイルの識別方法を理解し、適切に対応できるよう訓練する必要があります。さらに、サイバー攻撃が発生した際の対応手順を明確にし、定期的に訓練を行うことで、被害を最小限に抑えることができます。
最後に、情報資産に対し多層防御を確立することも不可欠です。ファイアウォールやウイルス対策ソフトのみならず、データ暗号化やアクセス制御の強化といったセキュリティ対策を多角的に講じ、攻撃者が容易に侵入できないようにすることが求められます。
このように、サイバーセキュリティ体制を総合的に強化することで、地政学的リスクに起因するサイバー攻撃に対抗する力を備えることができます。

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まとめ

地政学的リスクに起因するサイバー攻撃は、現代のグローバルなネットワーク社会において、瞬時に国境を越え、広範な影響を及ぼす可能性があります。これに対処するためには、企業や組織が持続的に情報セキュリティ対策を強化し、地政学的な緊張や変動を敏感に察知し、迅速な対応を取ることが求められます。
また、今後の展望としては、常に進化するサイバー脅威に対抗するために、新たな技術や方策の開発が不可欠です。加えて、国際的な協力が重要であり、情報共有や共同の防御体制が築かれることが期待されます。
これらの取り組みを通じて、地政学的なリスクに伴うサイバー攻撃から被る可能性のある被害を最小限に抑える必要があります。

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