マルバタイジングとは?巧妙化する不正広告の実態とその対策について解説

マルバタイジングとは?巧妙化する不正広告の実態とその対策について解説
2024.10.15

インターネット広告は、デジタル時代のマーケティングにおいて不可欠な存在となっています。しかし、その一方で「マルバタイジング」と呼ばれる悪質な不正広告が急増し、個人ユーザーや企業に深刻な被害をもたらしています。この新たな脅威は、従来の広告詐欺とは異なり、高度な技術と巧妙な手口を駆使して、正規の広告ネットワークを悪用するという特徴があります。
本コラムでは、マルバタイジングの実態と、その対策について詳しく解説します。

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目次

マルバタイジングの概要

マルバタイジングとは

マルバタイジング(Malvertising)とは、「Malware(マルウェア)」と「Advertising(アドバタイジング)」を掛け合わせた造語であり、 具体的には正規の広告ネットワークを通じて、マルウェアを含む悪意のあるコンテンツを配信する手法を指します。 この手法は、ユーザーが信頼する正規のウェブサイトに表示される広告を通じて攻撃を行うため、従来の広告詐欺よりも検出が困難で、被害が拡大しやすいという特徴があります。

従来の広告詐欺との違い

従来の広告詐欺は、主に偽の製品やサービスを宣伝し、ユーザーから直接金銭を搾取することを目的としていました。 一方、マルバタイジングは、ユーザーのデバイスにマルウェアを感染させることで個人情報の窃取やランサムウェアによる金銭要求など、より深刻な被害をもたらします。 また、正規の広告ネットワークを利用するためユーザーの警戒心を回避しやすく、感染の可能性が高いという点でも従来の手法とは大きく異なります。

マルバタイジングの手口

マルバタイジングの最大の特徴は、大手広告ネットワークを悪用する点です。 通常、広告を出す前には掲載内容やリンク先などの審査が行われるため、簡単に不正広告を出すことができないような仕組みになっています。 しかしながら、広告の審査時には安全な広告で審査を受け、実際にユーザーへ配信されるタイミングで不正広告に切り替えたり、 特定の地域や時間帯にのみ不正広告を表示させたりするなど、攻撃者はありとあらゆる手を使って広告ネットワーク側の審査をすり抜け、効率的に攻撃を行ってきます。

マルバタイジングの被害と影響

個人ユーザーへの影響

マルバタイジングによる個人ユーザーへの影響は多岐にわたります。最も深刻な被害は、マルウェア感染によるデータの窃取や金銭的損失です。 例えばバンキング型トロイの木馬(Banking Trojan)に感染した場合、オンラインバンキングの認証情報が盗まれ口座から資金が不正に引き出される可能性があります。
また、ランサムウェアに感染した場合は重要なファイルが暗号化され、解除のために身代金を要求されるケースもあります。 さらに、個人情報の流出によるプライバシーの侵害やなりすまし犯罪の被害に遭うリスクも考えられます。

企業や広告業界への打撃

マルバタイジングは、企業や広告業界にも大きな打撃を与えています。例えば、広告を掲載しているウェブサイトの信頼性が損なわれ、ユーザーの離反や広告収入の減少につながる可能性があります。また、広告ネットワークやプラットフォーム事業者はセキュリティ対策の強化や被害対応に多大なリソースを投入せざるを得なくなり、運営コストの増加を招いています。 さらに、マルバタイジングの横行によりオンライン広告全体に対する信頼性が低下するなど、デジタル広告市場の健全な成長を阻害する要因となっています。

不正広告の特徴

内容が不自然

偽広告を見分けるためには、まず不自然な特徴に注目することが重要です。例えば、誇張された表現や緊急性を煽る文言(「今すぐクリック!」、「限定特価!」など)が頻繁に使用されている広告は要注意です。また、著名人や有名企業の名前を無断で使用している広告や、文法的におかしな表現、不自然な日本語なども不正広告の特徴といえます。

リンク先のURLがおかしい

広告をクリックする前に、必ずリンク先のURLを確認することが重要です。多くのブラウザでは、リンクにマウスを重ねるとURLが表示されます。正規のドメイン名とわずかに異なる「ドッペルゲンガードメイン」と呼ばれる手法(例:「googIe.com」のように「l」を大文字の「I」に置き換える)や、無関係のドメインへのリダイレクトなどに注意が必要です。また、HTTPSではなくHTTPで始まるURLは、セキュリティ上のリスクが高いため避けるべきです。

マルバタイジングの対策状況について

広告配信プラットフォームの取り組み

大手広告配信プラットフォームは、マルバタイジングに対して積極的な対策を講じています。Googleは、機械学習を活用した広告スキャンシステムを導入し、悪意のあるコンテンツの検出精度を向上させています。また、Microsoftは、リアルタイムで広告コンテンツを分析し、不正な広告を即座にブロックする技術を開発しています。これらのプラットフォームは、広告主の審査基準を厳格化し、不正な広告主のアカウントを速やかに停止する体制も整えています。さらに、業界全体での情報共有や、セキュリティ企業との連携強化により、新たな脅威への迅速な対応を目指しています。

セキュリティ企業の対応

セキュリティ企業は、マルバタイジングに特化した対策ソリューションの開発に注力しています。例えば、ネットワークトラフィックをリアルタイムで分析し、不正な広告配信を検知・ブロックするシステムや、広告コンテンツの動的解析技術の開発が進められています。また、AIを活用した行動分析により、従来の手法では検出が困難だった新種の脅威にも対応可能な製品も登場しています。
さらにセキュリティ企業は、マルバタイジングの手口や最新の脅威情報を継続的に調査・公開することで、ユーザーや企業の啓発活動にも貢献しています。

マルバタイジング対策としてできること

セキュリティソフトの活用

セキュリティソフトを導入し、常に最新の状態に保つことで、マルバタイジングの脅威から身を守ることができます。多くのセキュリティソフトは、既知のマルウェアや不正なウェブサイトをブロックする機能を持っています。また、一部の高度なセキュリティ製品では、AIや機械学習を活用して、未知の脅威も検知・防御することが可能です。

ブラウザの設定と拡張機能の活用

マルバタイジング対策として、ブラウザの設定を最適化することが重要です。まず、ブラウザを常に最新版に更新し、セキュリティパッチを適用することで、既知の脆弱性を塞ぐことができます。また、ポップアップブロッカーを有効にし、不要な広告の表示を制限することも効果的です。さらに、広告ブロック機能を持つ拡張機能を利用することで、多くの不要な広告やトラッキングスクリプトを遮断することができます。ただし、信頼できる開発元の拡張機能のみを使用し、必要以上に多くの拡張機能をインストールしないよう注意が必要です。

最新の脅威情報の把握

サイバーセキュリティの脅威は日々進化しており、マルバタイジングの手法も例外ではありません。そのため、最新の脅威情報を常に把握しておくことが重要です。具体的には以下のような方法で、最新情報を入手し、自身の防御策を更新することができます。

  • 信頼できるセキュリティ企業のブログや脅威情報サイトを定期的にチェックする
    多くの大手セキュリティ企業は、一般向けに最新の脅威動向をわかりやすく解説しています。
  • 政府機関が提供するサイバーセキュリティ情報を活用する
    警察庁やIPA、JPCERTなどが定期的に脅威情報や対策を公開しています。
  • テクノロジー関連のニュースサイトを利用する
    これらは最新のセキュリティトレンドを知る良い情報源となります。

最新の脅威情報を把握することで、新たな形態のマルバタイジングにも迅速に対応できるようになります。また、家族や同僚にもこれらの情報を共有することで、周囲のセキュリティ意識向上にも貢献できます。

ITリテラシーの向上

マルバタイジングから身を守るためには、情報リテラシーの向上が不可欠です。具体的には、以下のような点に注意を払うことが重要です。

  • 情報源の信頼性を確認する習慣をつける
    広告や記事の出典が明確で、信頼できるものかどうかを常に確認する。
  • 「あまりに良すぎる話」には警戒心を持つ
    過度に魅力的な商品やサービスの広告には、詐欺の可能性があることを認識する。
  • SNSやメッセージアプリで共有される情報や広告リンクは、特に慎重に扱う
    知人からの共有であっても、その情報の真偽を独自に確認する習慣をつける。

ITリテラシーを身につけることで、マルバタイジングだけでなく、フィッシング詐欺やSNSを利用した新たな形態のサイバー攻撃からも身を守ることができます。

まとめ

マルバタイジングは、デジタル広告の信頼性を揺るがす深刻な脅威として、今後もさらなる進化が予想されます。そうした脅威への対策として重要なのは、常に最新の脅威情報を収集し、都度必要な対策を行っていくことです。デジタル広告は、企業の製品やサービスの認知度をPRするための大切なツールであり、個人にとってもより良いサービスを知るとても良い仕組みです。個人、企業、広告業界が一丸となってセキュリティ意識を高めていくことで、マルバタイジングによる被害を最小限に抑え込みましょう。
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