検出困難!?ファイルレスマルウェアの脅威と対策

検出困難!?ファイルレスマルウェアの脅威と対策
2024.6.12

ファイルレスマルウェアは、従来の対策では検出が難しく、企業や個人に大きな脅威となるマルウェアです。本記事では、ファイルレスマルウェアの仕組みや特徴を解説し、最新の攻撃事例を交えながら、効果的なサイバーセキュリティ対策を具体的にご説明します。

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目次

ファイルレスマルウェアとは?

ファイルレスマルウェアの定義

ファイルレスマルウェアとは、感染先のPC上にファイルを残さずに攻撃を行うマルウェアの一種です。従来のマルウェアは実行可能ファイルなどの形式で保存され、そのファイルを実行することで攻撃を開始しますが、ファイルレスマルウェアはメモリ上で直接実行されます。

従来のマルウェアとの違い

従来のマルウェアはファイルとして保存されるため、アンチウイルスソフトによる検出が比較的容易でした。一方、ファイルレスマルウェアはファイルを残さないため、従来のアンチウイルスソフトでは検出が難しく、また、感染先のシステムにすでに存在する正規のツールやプロセスを悪用して攻撃を行うため、不審な動作を見抜くことが困難です。

ファイルレスマルウェアの攻撃方法とその仕組み

ファイルレスマルウェアは、フィッシングメールやマルバタイジング(不正な広告)を通じて感染先のPCに侵入し、PowerShellやWMI(Windows Management Instrumentation)などのWindowsシステムにデフォルトでインストールされている正規のツールを悪用して攻撃を実行します。メモリ上で直接実行されるため、永続性は低いものの、検出が難しく、感染が拡大しやすいという特徴があります。

ファイルレスマルウェアはなぜ危険なのか

ファイルレスマルウェアは、次のような理由から特に危険とされています。

検出が困難

  • ファイルレスマルウェアは、ファイルを作成せずにメモリ上で直接実行されるため、従来のアンチウイルスソフトでは検出が難しい
  • ディスク上の痕跡が少ないため、フォレンジック調査での発見も困難

正規のツールを悪用

  • PowerShellやWMIなどの正規のツールを悪用するため、セキュリティソフトによる検知を回避しやすい
  • 管理者権限で実行される正規のツールを悪用するため、高い権限で活動できる。

感染経路の多様化

  • フィッシングメール、脆弱性の悪用、正規のWebサイトの改ざんなど、様々な感染経路を持つ
  • ユーザーの行動を介さずに感染するため、人的ミスによるリスクが高い

情報窃取の危険性

  • ファイルレスマルウェアは、感染したシステムから機密情報を窃取するために使用されることが多い
  • メモリ上で直接実行されるため、暗号化されたデータも復号した状態で窃取される可能性がある

他の攻撃の踏み台に利用される危険性

  • ファイルレスマルウェアに感染したシステムが、他の攻撃の踏み台として利用されるリスクがある
  • 感染したシステムがボットネットに組み込まれ、DDoS攻撃や他のマルウェアの配布に利用される可能性がある

ランサムウェアとの組み合わせ

  • ファイルレスマルウェアは、従来のマルウェア対策では防御が難しい
  • メモリ上の動作を監視し、異常を検知する高度なセキュリティ対策が必要とされる

これらの特徴から、ファイルレスマルウェアは企業や組織にとって大きな脅威となっています。

対策

人的対策

ファイルレスマルウェアに対する人的対策としては、以下のようなことが挙げられます。

セキュリティ教育の徹底

従業員に対して、不審なメールの添付ファイルを開かないことや、信頼できないWebサイトにアクセスしないことなど、基本的なセキュリティ対策について定期的な教育を行う。

最低限の権限付与

管理者権限を持つユーザーを制限し、ユーザーに与える権限は、業務に必要な最小限のものに留める。

不審な動作の監視と報告

従業員が不審なシステムの動作や、通常とは異なる挙動を発見した場合、速やかにIT部門に報告するよう周知することで被害を最小化する。

インシデント対応計画の策定

対応手順を明確化し、関係者への速やかな連絡体制を整える。ファイルレスマルウェアによる感染が発生した場合に備え、インシデント対応計画を策定しておく。

セキュリティ意識の向上

従業員のセキュリティ意識を高めるために、定期的な啓発活動を行う。ファイルレスマルウェアの脅威や、その対策について理解を深めてもらう。

これらの人的対策でファイルレスマルウェアのリスクを効果的に低減することができます。しかし人的対策のみでは不十分であり、次に述べる技術的な対策と組み合わせて復号的に対策することが求められます。

技術的な対策

ファイルレスマルウェアへの対策としては、以下のような多層的なアプローチが有効です。

OSやソフトウェアの更新

最新のセキュリティパッチを適用し、既知の脆弱性を修正する。

アプリケーションの制御

信頼できないソースからのアプリケーションのインストールを制限し、PowerShellやマクロなどの悪用されやすい機能の実行を制御する。

ネットワークのセグメント化

重要なシステムを隔離し、侵入の影響範囲を最小限に抑える。

ログの監視

システムやネットワークのログを定期的にモニタリングし、不審なアクティビティを検知する。SIEMツールの導入が有効。

バックアップの実施

定期的にデータのバックアップを取り、感染時の復旧に備える。

アプリケーションの隔離化

コンテナ技術やシステムの仮想化により、アプリケーションを分離し、感染の拡大を防ぐ。

これらの対策を組み合わせることで、ファイルレスマルウェアのリスクを大幅に減らすことができます。ただし、攻撃手法は常に進化しているため、継続的にセキュリティ対策を見直し、改善していくことが肝要です。

EDRの利用

ファイルレスマルウェアは、従来のマルウェアとは異なり、ファイルを作成せずにシステムに侵入し、悪意のある活動を行います。このタイプのマルウェアは、既存のシステムツールやプロセスを悪用して、検出を回避しながら動作します。
従来のシグネチャ方式の対策では、マルウェアのファイルに含まれる特定のパターンを識別することで検知を行います。しかし、ファイルレスマルウェアはファイルを作成しないため、シグネチャ方式では検知することができません。
そのため、ファイルレスマルウェアへの対策には、振る舞い検知方式が必要となります。振る舞い検知方式では、システム上で発生する異常な動作やパターンを分析し、マルウェアの活動を検知します。具体的には、以下のような手法が用いられます

1. プロセスの監視:不審なプロセスの動作や、既存のプロセスへの不正な注入を検知する。
2. ネットワークトラフィックの分析:マルウェアが外部のC&Cサーバーと通信する際の異常なトラフィックを検知する。
3. メモリの監視:メモリ上で実行されるマルウェアの動作を検知する。
4. APIコールの監視:マルウェアが悪用する可能性のあるAPIコールを監視する。

これらのことから、ファイルレスマルウェアにはEDRが持つ防御機能が特に有効であると言えます。
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まとめ

ファイルレス攻撃は従来の対策では防ぎにくい側面があります。従来のマルウェアと同様にに人的対策のほか、ファイルレスマルウェアの対策となるEDRなどで多層的な防御を心掛けましょう。

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