人的セキュリティ対策とは?「人」が原因の情報リスクとその対策を解説

人的セキュリティ対策とは?「人」が原因の情報リスクとその対策を解説
2024.12.04

情報化社会が進展する中で、企業や個人にとってセキュリティインシデントは避けて通れない問題となっています。特に、人的要因によって引き起こされるインシデントは、予防が難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、人的要因に起因する情報リスクについて詳しく解説し、その具体的な事例と対策を紹介します。

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目次

情報セキュリティにおける人的脅威とは?

情報セキュリティにおける人的脅威とは、組織内の人々が意図的または無意識に引き起こすセキュリティリスクを指します。 この脅威はしばしば、セキュリティインシデントの発生源となり得ます。
人的要因は、たとえば社内の情報を誤って外部に送信したり、悪意のある第三者が社内の職員を利用することなどが含まれます。 これらの行為は、結果的に機密データの漏えいを引き起こし、企業の信用を損なう可能性があります。
したがって、情報セキュリティを強化するためには、技術的な対策のみならず、人的要因にも注目することが重要です。

情報漏えい原因の多くを占める人的要因

情報漏えいにおいて、人が引き起こすセキュリティリスクは非常に大きな割合を占めています。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2024」においても、前年と比較して大きく順位が変動しているものとして、前年4位から3位に順位を上げた「内部不正による情報漏えい等の被害」および、前年9位から6位に順位を上げた「不注意による情報漏えい等の被害」について、これらは人的要因が大きいものとなります。

順位前年
順位
内容
1位1位ランサムウェアによる被害
2位2位サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃
3位4位内部不正による情報漏えい等の被害
4位3位標的型攻撃による機密情報の窃取
5位6位修正プログラムの公開前を狙う攻撃(ゼロデイ攻撃)
6位9位不注意による情報漏えい等の被害
7位8位脆弱性対策情報の公開に伴う悪用増加
8位7位ビジネスメール詐欺による金銭被害
9位5位テレワーク等のニューノーマルな働き方を狙った攻撃
10位10位犯罪のビジネス化(アンダーグラウンドサービス)
出典:IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)「情報セキュリティ10大脅威 2024」

セキュリティインシデントの多くは、システムの脆弱性ではなく、従業員の誤操作や不正行為から生じることが多く、こうした人的要因を軽視できません。 たとえば、パスワードの管理不足や誤ったファイルの送信、さらには社内規定を逸脱したデータの取扱いなどが、情報漏えいの主要な原因となっています。
ここでは、情報漏えいの事例をいくつか紹介します。

誤送信で約1,000件のメールアドレスが流出

誤送信は情報漏えいの主要な原因の一つであり、特にメールシステムの利用時に注意が必要です。 たとえば、ある組織で誤って約1,000件のメールアドレスが流出した事例があります。このケースでは、複数の受取人にメールを一斉送信する際、BCC(ブラインドカーボンコピー)機能の代わりにCC(カーボンコピー)機能が使用されてしまったため、他の受取人がすべてのメールアドレスを閲覧可能な状態になりました。 これにより、個人情報保護の観点から重大な問題が発生し、組織の信頼失墜につながる可能性がありました。

システム設定ミスで顧客データの外部閲覧が可能に

システム設定ミスがもたらすセキュリティインシデントは、往々にして人的要因が絡むケースが多く見受けられます。 特に、システム設定が不適切なまま運用されると、顧客データが外部から容易に閲覧可能となり、情報漏えいの重大なリスクを引き起こします。これは、セキュリティの観点から見て十分なテストや確認が行われない場合に発生しやすく、従業員がシステムの設定を誤ったままにしてしまうことで顧客のプライバシーが侵害される可能性があります。 このような設定ミスは、特にクラウド環境や複雑なネットワーク構成の中で頻発します。たとえば、アクセス権限の管理が甘かったり、ファイアウォール設定が不十分であったりすることで、本来は制限されるべき情報が外部から見えてしまうことがあります。

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セキュリティマニュアルとルールの策定

セキュリティインシデントの多くは人的要因に起因するため、その防止には組織全体での取り組みが不可欠です。その中でもセキュリティマニュアルとルールの策定は基礎となり、全ての従業員が共通の理解を持つための重要なステップです。
具体的な策定プロセスとしては、まず現状の業務フローを詳細に把握し、リスクアセスメントを行う必要があります。これにより、どの部分がセキュリティインシデントを招く可能性があるのか明確にします。
次に、リスクの洗い出しに基づきマニュアルを作成します。このマニュアルには、セキュリティ上の注意点や対応手順、さらに具体的な事例を含めることで、従業員が状況に応じた適切な行動を取れるようにします。
また、ルールとして書面化し、企業文化に根付かせるための仕組みが求められます。例えば、定期的な見直しと更新、ルール違反時のペナルティ、インシデント発生時の報告体制の整備などが考えられます。
最後に、このマニュアルやルールを社内で浸透させるための教育が必要です。定期的な研修やeラーニングを通じて、全社員に対する周知を徹底し、ルールが形だけのものにならないように実効性を持たせます。

社員教育の実施

マニュアルやルールを社内で浸透させるために、社員教育の実施も重要です。 人的要因による情報リスクを最小限に抑えるには、従業員がセキュリティ意識を高め、具体的な知識とスキルを身につけることが不可欠です。
社員教育の実施においては、まず基本的なセキュリティルールを理解させることが重要です。これには、パスワード管理の適切な方法や、フィッシングメールの見分け方、情報の機密性に関する基本的な知識を含みます。
また、定期的なトレーニングやワークショップを通じて、最新のセキュリティ脅威についても情報をアップデートし続けることが必要です。実践的なシナリオを用いた訓練は、従業員が現実の状況でどのように対処すべきかを理解するのに役立ちます。
さらに、情報セキュリティポリシーを徹底するために、各社員の行動を継続的にモニタリングし、問題が発生した際には迅速にフィードバックを提供する制度を設けることも効果的です。

内部不正を防ぐための制限の設置

内部不正を防ぐためには、情報へのアクセス制限を設けることも重要です。
アクセス制限には、システム上の権限管理が含まれ、各職務に応じた適切な権限を設定することが求められます。具体的には、業務上不要なデータや機密情報にアクセスできる権限を最小限にすることが挙げられます。このような制限により、不要な情報へのアクセスを防ぎ、不正利用のリスクを軽減します。
また、ログの監視を強化することも有効です。ログの監視は、異常なアクセスや不審な操作を早期に発見するための手段となります。特に、通常では考えられない時間帯や場所からのアクセスは注意が必要です。リアルタイムでの監視体制を整えることで、問題発生時に迅速に対応が可能になります。
さらに、物理的なアクセス制限も考慮されるべきです。データセンターやサーバールームへの入室制限を設け、認証手続きを厳格にすることは、内部不正の抑止につながります。加えて、入退出の履歴管理も実施することで、アクセスの可視性を高め、問題の発生を抑えることができます。

発生時に被害拡大を防ぐための対策

セキュリティインシデントが発生した際に被害を最小限に抑えるためには、迅速かつ体系的な対応が不可欠です。
まず、緊急連絡網の整備を行い、インシデント発生時には関係部署や責任者に速やかに報告が行き届くようにします。
次に、事前にシミュレーション訓練を行い、実際の対応時に混乱が生じないよう備えることが重要です。
また、インシデント対応チームを組織し、事前に役割分担を明確にしておくことで、迅速な対応が可能になります。
情報の流出やシステム停止などの具体的な被害を防ぐためには、ログの監視やアクセス制御の強化を通じて、不正な挙動を早期に発見し対策を講じることが求められます。そして、後続の業務に与える影響を最小限に留めるために、代替手段やバックアップ体制の確立も怠ってはなりません。

働き方改革の推進が人的脅威の抑制に

働き方改革が進む中で、多様な働き方が企業にとってのセキュリティ上の課題を新たにしています。しかし、この改革は人的脅威の抑制にも役立つ可能性を秘めています。
例えば、リモートワークの導入は柔軟な勤務時間を可能にし、従業員のストレスを軽減し、結果として業務ミスの減少に寄与します。また、テレワーク環境では、セキュリティプロトコルの確立やデジタルツールの利用が進むため、自然とセキュリティ意識が向上します。さらに、働き方改革による労働環境の改善は、従業員のエンゲージメントを高め、やる気や会社への忠誠心を強化します。これにより、内部不正行為の発生が抑えられ、安全な情報管理が促進されます。
継続的な研修や教育を通じ、従業員がセキュリティリスクを理解し、適切な対応策を取れるようにすることも、改革の一環として重要です。結果として、働き方改革は単なる生産性向上の手段にとどまらず、組織全体のセキュリティ強化にも大きく貢献するのです。

まとめ:「人」からセキュリティを強化しよう!

人的セキュリティを強化することは、企業全体の情報保護において非常に重要です。
セキュリティインシデントの多くは、技術的な防御を突破するのではなく、人間の注意力不足や誤った判断によって引き起こされます。このため、人的要因への対策は、情報漏えいリスクを未然に防ぐ鍵となり、組織のセキュリティレベルを飛躍的に向上させることができます。

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