離れて暮らす親御さんを守るサイバーセキュリティガイド
~子どもができる遠隔でのサポート方法~

離れて暮らす親御さんを守るサイバーセキュリティガイド~子どもができる遠隔でのサポート方法~
2024.11.21

「お父さん、そのメール開かないで!」―――離れて暮らす親御さんのスマートフォンやパソコンの使い方を心配したことはありませんか?

特殊詐欺やサイバー犯罪は、近年深刻な社会問題となっています。内閣府が発行している令和6年版高齢社会白書によると、特殊詐欺における被害者の認知件数および割合の8割弱が65歳以上とのことです。近年はインターネットやメールを悪用し、サポート詐欺や還付金詐欺なども発生しています。ご高齢の方もパソコンやスマートフォンを触る機会が増えている中、デジタル機器に不慣れな方々が標的にされるケースが後を絶ちません。
このような状況下で、離れて暮らす親御さんのデジタルライフを守るために、私たち子ども世代にできることは何でしょうか。このコラムでは、遠距離介護ならぬ「遠距離セキュリティサポート」の方法について、実践的なアドバイスをお届けします。完璧を目指すのではなく、できることから少しずつ始められる具体的な対策をご紹介していきます。

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目次

まずはここから始めましょう

基本的な対策の不備が重大な被害につながるケースは、実は珍しくありません。特に深刻なのはコンピューターウイルスに一度感染してしまうと、バックアップを取っていない大切な写真やデータまでもが失われてしまう可能性があることです。まず最初に確認したいのが、セキュリティソフトの状況です。無料版のセキュリティソフトでは十分な保護が得られない場合も多いため、ノートン、ウイルスバスター、ESETなどの信頼できるメーカーの製品を選びましょう。特におすすめなのが、遠隔で状況を確認できる機能が付いたファミリープランです。実家に帰省した際に一緒に設定し、普段は遠隔からでも見守ることができます。
また、「更新後に使い方が変わるのが怖い」という理由でOSやアプリの更新を何年も放置してしまい、結果としてマルウェアに感染してしまうケースもよく見られます。更新プログラムには重要なセキュリティ対策が含まれているため、定期的なアップデートは必須です。親御さんに更新通知が来たら、スクリーンショットを撮ってもらい、LINEで確認するという習慣をつけることをお勧めします。
この際、重要なのが更新作業のマニュアル化です。例えば、「①更新通知が来たらスクリーンショットを撮る」「②LINEで子どもに送る」「③確認が取れたら更新を実行する」といった手順を、紙に書いて分かりやすい場所に貼っておくと良いでしょう。一見単純な作業でも、手順が視覚化されていることで、親御さんも安心して実行できるようになります。

巧妙化する詐欺の手口から守る

「Amazonから不正アクセスの警告が来た」―――最近特に多いのが、大手企業を装った詐欺メールです。Amazonのロゴを使用し、「アカウントに不正アクセスがありました」という不安を煽る文面で、焦って偽サイトにアクセスしてしまうケースが後を絶ちません。
ある方は、Amazonを装った不正アクセスの警告メールを受け取り、焦ってリンクをクリックしてしまいました。その結果、クレジットカード情報を詐取され、約30万円の被害に遭ってしまったといいます。「普段から利用している企業からのメールだったので、疑いもせずに開いてしまいました」とのこと。
このような被害を防ぐために重要なのが、「焦らない」という意識です。たとえ緊急性を煽る内容でも、いったん深呼吸をして、冷静な判断を心がけましょう。そして、メールやSMSのリンクは絶対にクリックせず、必ず公式アプリか公式サイトにアクセスして確認するというルールを徹底することが大切です。
また、「宅配便の再配達」を装った偽SMSも要注意です。クリックを促すURLが添付されており、そこから個人情報を抜き取られてしまいます。PayPayなどの電子マネーに関する詐欺も増加傾向にあり、「セキュリティ警告」を装って電話による誘導を図るケースも報告されています。
これらの詐欺から身を守るためには、「公式アプリでのみ確認する」というシンプルなルールを徹底することが効果的です。Amazonなら公式アプリ、宅配便なら各社の公式アプリというように、信頼できるアプリをあらかじめインストールしておき、そこでのみ確認する習慣をつけましょう。
特に注意が必要なのが、電話でのやり取りです。最近では、セキュリティ警告を装って電話をかけ、遠隔操作ソフトのインストールを促す手口が増えています。「セキュリティ会社を名乗る人から電話があり、言われるがままに操作していたら、預金が引き出されていた」という被害も報告されています。基本的に、電話での指示による操作は一切行わない――このルールを必ず守るよう、親御さんに伝えましょう。

パスワード管理の新しい考え方

「覚えやすいパスワードにしているけど、大丈夫かしら」――誕生日や電話番号をパスワードにしている方は少なくありません。
こういった情報は簡単に推測されてしまう可能性が高く、大変危険です。特に気をつけたいのが、複数のサービスで同じパスワードを使い回すことです。一つのサービスでパスワードが漏洩すると、他のサービスも危険にさらされてしまいます。実際に、ショッピングサイトで使用していたパスワードが漏洩し、同じパスワードを設定していた銀行口座から預金を引き出されてしまったという事例も報告されています。
では、どのようにパスワードを設定すれば良いのでしょうか。総務省などでは、他人に推測されにくいように最低でも10文字以上の文字数で構成されるある程度長いランダムな英数字の並びとし、パスワード内に数字や記号、アルファベット(大文字、小文字)が混ざっていることが好ましいとされております。さらに複数のサービスで使い回さないことを推奨しています。ただ忘れてしまっては元も子もありません。ここでは一例ですが、ある程度覚えやすいパスワードの作り方をお伝えします。おすすめなのは、自分の好きな歌やフレーズ、また身近な事柄を活用する方法です。
例えば、「東京の実家に猫が2匹います」という文章をもとに、「Tokyo@Home2Cats」というパスワードを作ることができます。覚えやすく、かつ第三者には推測しにくいパスワードとなります。また、このパスワードをベースに、サービスごとに少しずつ変化をつけることで、安全性をさらに高めることができます。例えば、Amazonなら末尾に「Amz」を付けて「Tokyo@Home2CatsAmz」、楽天なら「Rak」を付けて「Tokyo@Home2CatsRak」というように変化させます。こうすることで、それぞれのパスワードの関連性を覚えやすく、かつ使い回しのリスクを避けることができます。
上記はあくまで一例ですが、皆さんが覚えやすいフレーズをベースとして、サービスごとにパスワードに変化をつけることで、それぞれのパスワードの関連性を覚えやすく、かつ使い回しのリスクを避けることができます。
また、パスワードの保管方法も重要です。デジタルに慣れている方であれば、パスワード管理アプリの利用がおすすめです。これらのアプリは、強固な暗号化技術で保護されており、一つのマスターパスワードで全てのパスワードを管理することができます。一方、アナログが好みの方には、専用の手帳を用意し、暗号化した形で記録する方法も効果的です。例えば、実際のパスワードの前後に決まった文字列を付け加えて記録するなど、第三者が見ても実際のパスワードが分からないような工夫をしましょう。
いずれの場合も、家族間での緊急時の共有方法をあらかじめ決めておくことが大切です。万が一の事態に備えて、パスワードの保管場所や解読方法を、信頼できる家族だけで共有しておきましょう。

コミュニケーションが最大の防御力

「困ったことがあってもどこに相談していいかわからない」――多くの高齢者が感じているこの不安を解消するのが、定期的なコミュニケーションです。例えば、毎週日曜日を「デジタル確認の日」と決めて、ビデオ通話で画面を確認しながら、気になる通知やメールについて話し合う時間を設けてみてはいかがでしょうか。画面共有をしながら一緒にネットショッピングを楽しんだり、デジタル機器の新しい使い方を教えあったりと、セキュリティ対策がコミュニケーションのきっかけにもなっているそうです。
特に重要なのが、「失敗を責めない」という姿勢です。不安なメールが来たら、たとえ些細なことでもすぐに相談できる関係性を築くことが大切です。「これくらいのことで相談するのは申し訳ない」と遠慮させてしまうと、本当に困ったときに連絡が来なくなってしまう可能性があります。
もしもトラブルが発生した場合の対応手順も、あらかじめ決めておくことが重要です。不審な動きを見つけたら、まずWi-Fiから切断し、デバイスの電源を切る。その後、すぐに子どもに連絡する――といった具体的な手順を、台所や電話機の近くに貼っておくのも良いでしょう。
また、地域の消費生活センターや警察の相談窓口の電話番号もリストアップしておくと安心です。サイバー犯罪被害の相談窓口もありますので、これらの情報を整理して、分かりやすい場所に掲示しておきましょう。

安全なネット生活のための習慣作り

「お得な通販サイトを見つけたのよ」――残念ながら、そのお得な価格の裏に危険が潜んでいることもあります。実際に、SNSの広告から飛んだ格安通販サイトで商品を購入したものの、偽物が届いた上に、クレジットカード情報も流出してしまったという被害も報告されています。
安全なオンラインショッピングのために、まずは信頼できるサイトをブックマークしておき、そこからのみアクセスする習慣をつけましょう。極端な値引きや不自然な日本語、お問い合わせ情報の不足などは、危険なサイトを見分けるポイントとなります。
また、支払い方法も重要です。クレジットカード情報を入力する際は、URLの先頭が「https://」になっているか、鍵マークが表示されているかを必ず確認しましょう。可能であれば、クレジットカード情報を入力せずに済む支払い方法(代引きや後払いなど)を選択するのも一つの手です。
自宅のWi-Fiセキュリティも見直しが必要です。ルーターの設定確認やパスワードの定期変更は基本中の基本。来客用には別のゲストネットワークを設定しておくと、より安全にインターネットを利用することができます。

まとめ

サイバーセキュリティ対策は、一度の設定で完了するものではありません。このガイドを参考に、毎月のように確認と更新を重ねていくことが大切です。セキュリティソフトの動作確認、重要なアップデートの有無、不審なアプリの確認、決済履歴の確認、パスワード変更の必要性など、チェックポイントは多岐にわたります。
しかし、最も重要なのは「完璧を求めすぎない」という姿勢です。できることから少しずつ始め、継続的なコミュニケーションを通じて、親御さんと一緒に安全なデジタルライフを築いていきましょう。遠く離れていても、適切な準備と継続的なサポートがあれば、必ず親御さんの安全なデジタルライフを支援することができるはずです。
デジタル社会における高齢者のセキュリティ対策は、継続的な取り組みが必要です。定期的な連絡を取り合い、新しい脅威について情報共有を行うことが重要です。また、一度設定した対策も定期的な見直しが必要です。
特に重要なのは、「困ったときには必ず相談する」という習慣づけです。些細な不安でも、家族に相談することで多くの被害を未然に防ぐことができます。テクノロジーの進化とともに新たな脅威が現れる中、家族間のコミュニケーションこそが最も効果的な防御策となるのです。

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