SaaSの利用を安全に管理するために有効なSSPMとは?概要と選定時のポイントについて解説

SaaSの利用を安全に管理するために有効なSSPMとは?概要と選定時のポイントについて解説
2025.1.15

DXの進展により、多くの企業がSaaSを積極的に活用するようになった現在、情報セキュリティの重要性はかつてないほど高まっています。 企業の情報資産を守りながら、SaaSの利便性を最大限に活用するためには、適切な管理と監視が不可欠です。 そこで注目されているのが、SSPM(SaaS Security Posture Management)です。本コラムでは、SSPMの概要から選定時のポイントまで、わかりやすく解説します。

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目次

SSPMとは

SSPMは、「SaaS Security Posture Management」の略称で、企業が利用する複数のSaaSのセキュリティリスクを一元的に管理・監視するためのセキュリティソリューションです。SSPMは、それぞれのSaaSが持つセキュリティ設定やポリシーを監視し、リスクを特定して管理する役割を果たします。 これにより、社内で利用しているSaaSの設定状況を可視化しつつ、潜在的な脆弱性を早期に発見して対策を講じることが可能となります。有名なSaaSとしては、「Microsoft 365」、「Salesforce」、「Slack」、「Zoom」など様々なサービスがあります。

SSPMが注目される背景

SSPMが注目される背景には、SaaS利用者の急増とそれに伴うセキュリティ脅威の増加が挙げられます。
総務省が公表するデータによれば、世界のSaaSの市場規模(売上高)は年々増加しており、2026年までに3,283億ドルにまで増加すると見込まれています。

世界のパブリッククラウドサービス市場規模(売上高)の推移及び予測

図:世界のパブリッククラウドサービス市場規模(売上高)の推移及び予測

参考:総務省「令和5年度 情報通信白書」を元に当社にて作成

しかしながら、多くの企業が効率化を求めてSaaSを導入する一方で、設定ミスや不適切な管理によるセキュリティインシデントも発生しています。
実際に、設定ミスにより企業の機密情報が意図せず公開されたままになっていたり、不正アクセスの原因となったりするケースもあるため、慎重な対応が求められています。 一方で、これらの多様なSaaSを個別に管理することは、従来の情報セキュリティ担当者にとって極めて困難となっています。そのため、アクセス権限の適切な管理、データ保護、コンプライアンス遵守などの観点から、包括的な管理ツールへの注目が高まっています。

SSPMの主な機能と役割

ここからは、SSPMの主な機能とその役割について説明していきます。

リアルタイム監視とアラート機能

リアルタイム監視とアラート機能は、SaaSの使用状況を即座に把握し、潜在的なセキュリティ脅威を迅速に検出することができます。この機能を活用することで、異常な操作やセキュリティ侵害の予兆をリアルタイムで検知することが可能となり、迅速な対応が求められる場面での遅延を最小限に抑えます。 アラートは、事前に設定された基準に基づいて自動的に通知されるため、管理者は即時に適切な対策を講じることができます。

ポリシー管理とコンプライアンス遵守の支援

企業が遵守すべき規範や法律を体系的に管理し、その適用を実行することができます。まず、SSPMは遵守すべきコンプライアンス要件や社内ポリシーを設定することで、SaaSごとに異なるポリシーを統合的に管理できるようになります。 さらに、コンプライアンス基準に基づいた定期的な監査を支援し、法令順守のためのチェックリストやガイドラインの提供を通じて、企業のコンプライアンス維持を強化します。

詳細なリスク分析と評価機能

各SaaSのセキュリティ設定、アクセス権限、データ共有ポリシーなどを包括的に分析し、潜在的なリスクを特定します。高度な機械学習アルゴリズムを活用することで、従来の手法では検出が難しかった複雑なセキュリティの脆弱性も検出することができます。

SSPMを導入するメリット

SaaSの一元管理が可能

すべてのSaaSのセキュリティ状況を一元的に把握できます。多数のSaaSの設定や利用状況を、単一のダッシュボードで効率的に管理できるため、セキュリティ担当者の業務負荷を大幅に軽減します。

リスク低減

潜在的な脆弱性を事前に特定し、対策を講じることができます。継続的なリスク評価と推奨される改善策の提示により、セキュリティ態勢を継続的に最適化することが可能となります。

コンプライアンス遵守

SOC2、CIS Benchmarks、ISO/IEC 27001といったグローバル基準に基づき、SaaSの設定が適切かをチェックすることができます。これによりセキュリティポリシーに準拠しつつ、業界や地域特有のコンプライアンス要件に適合したSaaS利用が可能になります。特に、これらの基準に沿った設定状態を確認することで、潜在的なリスクを低減し、信頼性を高めることができます。

インシデント対応の迅速化

異常検知から対応までの時間を短縮できます。高度な相関分析と自動通知機能により、セキュリティインシデントへの迅速かつ的確な対応が可能になります。

SSPMとCSPMとの違い

SSPMとCSPMはどちらもクラウドサービスのセキュリティを強化するための重要なツールですが、その目的と機能には明確な違いがあります。SSPMは主にSaaSに特化して、個々のサービスのセキュリティ状況を詳細に管理することを目的としています。これに対し、CSPMはクラウド環境におけるセキュリティ態勢を継続的に評価、監視、改善を行います。
CSPMについては関連コラムで紹介しておりますので、以下のリンクからご覧ください。

SSPMを選定する際のポイント

SSPMソリューションを選定する際は、以下のポイントに気を付けて選定すると良いでしょう。

監視可能なSaaSの種類

SSPMを導入する際、監視可能なSaaSの種類は極めて重要です。企業が利用するSaaSの数は年々増えていることからSSPMがそれら全てに対応できるかどうかは選定の大きな決め手となります。そのため、まずは企業が利用しているSaaSを特定し、それらがSSPMで監視可能か確認するようにしましょう。これにより、セキュリティリスクを一元的に管理できるだけでなく、無駄なツールやリソースを最小限に抑え、効率的な運用が可能になります。

セキュリティ評価項目の数

SaaSを利用する際、セキュリティ評価項目の数はその安全性に直結します。なぜなら、評価項目が多いほどセキュリティの網羅性が高まり、脆弱性の検知や対策が可能になるからです。具体的には、アクセス制御、データ保護、暗号化手段、ログ管理などが挙げられ、これらが充実していると信頼性も高まります。適切な評価項目を見極め、導入時にそれらをしっかりと確認すること大切です。

自社の環境に合わせた柔軟な設定ができるか

自社の環境に合わせて柔軟に設定できるかどうかも確認しておきましょう。SaaSは、企業ごとに利用状況やニーズが異なるため、画一的なセキュリティポリシーでは十分な保護を実現できない場合があります。そのため、自社のセキュリティ要件に応じてどこまでカスタマイズ可能であるかをトライアルなどで事前に確認しましょう。柔軟性のあるSSPMを選定することで、異なる業務プロセスやデータフローパターンに適したポリシー設定が可能となり、効率的にリスク管理ができます。

導入後のサポート体制

SSPMの導入成功の鍵を握るのが、ベンダーの充実したサポート体制です。セキュリティ対策の要となるツールなだけに、システムの安定稼働はもちろん、新たな脅威への迅速な対応や、運用ノウハウの提供が不可欠です。
具体的なポイントとして、24時間365日の技術サポート体制、定期的な脆弱性情報の提供、運用担当者向けのトレーニングプログラム、導入後の運用支援などが重要です。また、日本国内にサポート拠点を持ち、日本語での迅速なコミュニケーションが可能なベンダーを選定することで、問題発生時の円滑な解決が期待できます。

まずは自社で利用しているSaaSの把握から始めよう

SaaSの効果的な管理とセキュリティ対策を講じるためには、まず社内で利用しているすべてのSaaSを正確にリストアップすることが重要です。 この作業は、セキュリティの観点からも欠かせません。リストアップのプロセスでは、各部門が独自に利用しているツールや、頻度や用途の異なるサービスも漏れなくまとめることがポイントです。 特にシャドーITの可能性を排除するため、IT部門が知らないSaaSも視野に入れて調査することが求められます。このような包括的なリストが、SSPMの導入を成功に導くための初期ステップであり、組織全体のセキュリティ強化と運用効率向上に貢献します。

なお、SaaSに限らず企業で利用しているIT資産の把握は大変重要です。自社で利用中のシステムはいくつあり、どのようなデータが保管されているのか。何台のPCやタブレットなどを利用していて、どのようなソフトウェアが使われているのか。 そうした情報を知ることで、初めて組織として本当に守るべき資産を特定することができます。 ALSOKでは、IT資産管理に必要な機能を厳選したお得なWeb限定プランを提供しています。運用サポートも付いており、運用にかかる負担を最小限に抑えることができるので、お気軽にお問い合わせください。

まとめ

SaaSの利用拡大に伴い、それらのセキュリティ管理の重要性は日々高まっています。SSPMは、この複雑化するデジタル環境において、企業の情報資産を守る重要なソリューションの1つです。自社のSaaSセキュリティ戦略を見直す絶好の機会として、まずは、利用中のSaaSの洗い出しから始めてみてはいかがでしょうか。

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